【有馬記念】藤沢和雄氏が語る秋古馬3冠 20年ぶり偉業に挑むドウデュースにエール
04年にゼンノロブロイで秋古馬3冠を達成した藤沢和雄氏(73)が、当時の思いを語った。条件の違うタフな3戦をどう乗り切ったのか。名トレーナーが20年ぶりで偉業に挑むドウデュースにエールを送った。 有馬記念に「絶好調」はいらない。「普通の状態」であればいい。調教師時代にそんなせりふを口にしていましたが、引退した今でもそう思っています。東京2000メートル(天皇賞・秋)、東京2400メートル(ジャパンC)というタフなコースで連戦した後に待ち構えるグランプリレース。天皇賞・秋、ジャパンCでは何世代もの強い馬たちとしのぎを削ってきたのだから疲れを残さず有馬へ行くのは本当に大変です。疲労が残っているか、残っていないか。余力の有無がポイント。最後の大一番で体調がさらに良くなることは、まずないと思います。 天皇賞・秋、ジャパンCを連勝したゼンノロブロイには「秋最後のレースだから頑張れ!」と励ましながら送り出しました。秋の古馬G1は1つ勝つのも大変。3つ勝つのは至難。疲れを引きずらずに有馬記念も勝たせてもらえたのはこの馬の気性のおかげでしょう。競馬も調教も一生懸命走ろうとしない馬でした。渋いというか、手を抜くというか。引っ掛かることもなければ、疲れるほど走ることもない。もともと調教をやらない厩舎だし、速い調教時計を出すこともなかった。そんな気性だったから秋の古馬G1を3つ行く上で調整が楽でした。一生懸命走っていない分だけ最後までエネルギーが残っていた。逆に真面目で一生懸命走る馬にとってこの3連戦は凄く難しい。有馬記念の前に疲れてしまうからです。 シンボリクリスエスという強い馬が前の年まで厩舎にいたので躍起になって仕上げることもなかった。人間が張り切り過ぎて馬に過酷な調教を強いても良い結果は出せないものです。 その年の春競馬(宝塚記念)を終えたゼンノロブロイはファンタストクラブ(北海道日高町)でいい夏休みを取って、いい雰囲気で秋口に美浦へ戻ってきました。夏でも比較的涼しい北海道だから疲れも取れたし、調教もできた。秋のハードなローテーションを乗り切るためには夏の過ごし方も大切です。 怒られて仕方なしに走っていたような馬なので当たりの強いオリビエ・ペリエ騎手も合っていた。オリビエに促されて強い競馬ができました。 今年はダービー馬ドウデュースが武豊騎手の手綱で秋の古馬3冠に挑むと聞いています。凄く強い馬です。昨年の有馬記念を勝った時もそう思いました。今秋の2戦も「さすがダービー馬と言われる競馬をしてもらいたい」と応援しながら見せてもらいました。期待を裏切らない競馬でした。最後の有馬記念もダービー馬なんだから勝ってもらいたい。(談) ◇藤沢 和雄(ふじさわ・かずお)1951年(昭26)9月22日生まれ、北海道苫小牧市出身の73歳。87年、JRA調教師免許取得し、88年に美浦トレセンで開業。JRAリーディング(中央競馬年間勝利数1位)12回。歴代2位のJRA通算1570勝(うち重賞126勝、G1・34勝)。70歳定年で22年2月末に引退。3月、JRAアドバイザーに就任。6月に競馬の殿堂入りにあたる顕彰者に選ばれた。同年11月にはスポニチ本紙連載「我が道」に登場。