〝万博の華〟自前の海外館、遅れる建設 情報把握と密なコミュニケーションが重要に
2025年大阪・関西万博で参加国が独自に設計、建設する海外パビリオン「タイプA」。各国が意匠を凝らしたデザインは〝万博の華〟とされ、パビリオンの概要が発表されるたびに注目が集まる。ただ、各国のパビリオンは建設遅れの問題に直面。万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)などは、パビリオンごとの状況把握に加え、参加国への必要な情報提供やアドバイスなどコミュニケーションへの努力が求められる。 【表で見る】2025年大阪・関西万博に出展する海外パビリオンの状況 各国が1つの空間に集まり、多様な価値観を共有する貴重な機会となる万博。三菱総合研究所の今村治世万博推進室長は目玉となるタイプAの果たす役割は大きいとし、「来場者にとって万博は『学ぶ』要素だけでなく、わくわくするようなエンターテインメントの要素も大切となる。タイプAは見た目も個性的でこうした意味でも重要だ」と強調する。 ただ、タイプAでは建設資材や人件費の高騰などにより、各国が思うように建築業者を見つけられず、建築業者との契約が進まないケースが続出。契約にこぎつけたパビリオンでも当初の想定より契約が遅れ、現時点で着工できていない国があるのが実情だ。 このうち、アルメニア館の設計を担当する建築家の遠藤秀平氏は「早ければ6月末に着工を予定しているが、本来ならば8~10カ月かかる工事。目安時期は現実的ではない」と明かす。 着工遅れの中、さらに追い打ちをかける事態となったのが、協会などから十分な案内がなく、現場が混乱したことだ。「施工候補業者へは、工事の進め方や資材搬入などについて工事段階で協会が協力できる範囲のアナウンスを見積もり時点でもわかるように詳しく対応してほしかった」と話す。 こうした状況について今村氏は「案内がないため作業などが停滞していく状況を防ぐためにも、万博協会などから現状の説明を丁寧にするなど密なコミュニケーションが重要となる」と指摘。 作業が遅れている各国に対し、日本の建築素材を案内するなど、協会や各国を結ぶ横断的な、専門知識を持つコミュニケーターの存在が必要とした。(清水更沙)