【承香院さんの五感で楽しむ平安ガイド Vol.3】平安の夜の明るさ暗さを感じてみる。
煌々とした照明とは異なる夜の世界で見えるもの。
『枕草子』にもそうした章があるのだという。“夜まさりするもの” “火影におとるもの”――それぞれ夜のほの暗さと、ほの明るさの元ならではの見え方、感じ方を清少納言が語っていて、読めばなるほど、と思わせてくれます。たとえば、夜陰でよく思えるものとして濃い紅色の絹織物や琴の音を挙げながら、そこに「顔立ちが今ひとつでも雰囲気のある人」と加えるのはいかにも清少納言らしく……さすがです。ちなみに、火影で見劣りするのは紫の織物や藤の花とのこと。やはり織物の色の見え方は当時の人にとってとても大事だったよう。 「ほのかな灯りで見た方がよかったり、逆に劣ってしまったりする。それがどういう感覚だったのか? ということを考えてしまいます」と承香院さん。現代の煌々とした照明とはまた異なる、夜の世界が平安の当時は広がっていたのだろうなあと思わせます。 「中でも御簾越しの灯りはぼやーっとして独特ですね、やはりとても艶かしい感じ。まさに物語の世界。あの灯りしかないですからね、夜の室内は」そんな言葉とともに、最後に承香院さんが演出して見せてくれたのは、端近くまで出て月を眺めている袿姿(うちきすがた)の姫君の姿。「こちらの姫君は御殿の端近くに立って、月や蛍を見ながら歌を詠もうと袿姿で物思いに耽っているところでしょうか。それを女房が少しハラハラしながら室内から見守っているような。仕えている人の目線からの一場面です」平安の夜のほの暗さの雰囲気をぜひ一緒にご体験ください!
承香院 さん じょうこういん 平安文化実践研究家(主に装束) 平安時代の装束や文化を実践しながら独自に研究を重ね、SNSで発信。その集大成である『あたらしい平安文化の教科書』が刊行された。
撮影・青木和義 構成&文・中條裕子 撮影協力・バックグラウンズファクトリー
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