年貢を納めていた江戸時代のお上意識のまま…世界の常識「納税者はお客さま」が日本では根付かない訳
「自分で申告したい人の確定申告権は認めるべき」
TCフォーラムは公式ホームページに、納税者の権利確立を図るための提案の一つとして、「4000万人を超える給与所得者にも確定申告権を広く認めるべき」と記している。河野大臣の「すべての国民に確定申告を」との案と一致する部分はあるのか。 「私たちTCフォーラムでは、年末調整制度に選択制を導入するべきと考えています。給与所得者が自分で確定申告したいと思っても、今の制度ではそれができません。 年末調整には扶養控除や保険料控除の申告書が必要で、給与所得者はそれらの書類を会社に提出する必要があります。 たとえば離婚や死別後に再婚していなければ寡婦控除、家族に障害のある者がいれば障害者控除を受けられる。かなり個人的な事情なのに、控除を受けるためには会社に申告しなければいけません。プライバシーの問題としてどうなのでしょうか。 その点を考えても、自分で申告したい人の確定申告権は認めるべきではないかと思います」 河野大臣は公約で発表した年末調整廃止に関する考えを、自身の公式サイトやⅩでも説明している。 それによると、事業者は従業員に給与を支払うつど、所得などの情報をデジタルの形で国の一本化された窓口機関に送信する。窓口機関はマイナンバーを使って個人の所得、保険料、所得税、地方税を名寄せし、マイナポータルに表示。それらの情報はマイナポータル経由でe-TaxやeLTAXに自動入力される。 ◆「ポチッとボタンを押していただければ……」は無理! 5日の会見では「最終的には、すべての皆さんの確定申告表が自動で入力され、その数字を見ていただいてポチッとボタンを押していただければ、確定申告が終わる」と述べた。「税の使い道に厳しい目を注いでいこうという環境がつくられる」とも語っている。 だが、河野大臣の目的は納税意識の向上より、マイナカードの利用促進にあると見る国民は少なくないようだ。 「たとえば医療費控除の申請をする場合、マイナポータルとe-Taxは連携しているから、1年間の医療費を確定申告書に自動で入力できると言うけれども、医療費控除の対象は病院や調剤薬局で払った医療費だけではありません。 自費診療の支払いや通院のためのタクシーなどの交通費、市販薬や紙おむつなどの購入費用も対象になるんです。 でも、マイナ保険証と連携しているのは保険診療だけであって、それ以外の費用はマイナポータルに反映されません。個々人の事情によって異なるそういう細かいところまで含めて、自動で入力できるようになるのかどうか。 もし河野さんがおっしゃる確定申告制度にするなら、国民の側にかなりの準備期間が必要でしょう。マイナ保険証もインボイス制度もそうですが、国民が納得していないのに期日を決めて強引に始めるようなやり方が、そもそも納税者の権利を侵害していると思います」