年貢を納めていた江戸時代のお上意識のまま…世界の常識「納税者はお客さま」が日本では根付かない訳
「確定申告なんて面倒くさい」でいい!?
「年末調整を廃止して、すべての国民に確定申告をしていただきます」 自民党総裁選の公約発表で突如こう訴え、河野太郎デジタル相がまたもSNSで炎上した。 【ブロック太郎】ワクチン後遺症「助けて」を即日ブロック…河野太郎「ネットでの本当の評判」 自民党派閥の裏金事件をめぐり鈴木俊一財務相が「納税は議員の判断で」と発言した際には、フリーランスや自営業者から「#確定申告ボイコット」の投稿が相次いだ。だが、河野大臣の公約に対して「確定申告なんて面倒くさい」との声を上げたのは、会社員やパート、アルバイトなど企業から給与を得ている人たちではないだろうか。 給与所得者の場合、毎月の給料やボーナスから所得税と住民税が天引きされ、雇用主が年末調整することで所得税と住民税の納税が完結する。そのため、ほとんどの給与所得者は自分で確定申告を行う必要がない。 ゆえに給与所得者は、自分が支払っている税金に意識が向きにくいかもしれない。 「日本は福祉国家で、国民が社会保障を受けるために自ら負担しているのが税金です。しかし、どんな税金を支払っていて、その税金がどう使われているかといったことへの国民の関心は、残念ながら薄いと言わざるを得ません」 そう指摘するのは、TCフォーラム(納税者権利憲章をつくる会)の事務局長を務める税理士の平石共子さんだ。TCフォーラムは1993年に全国の税理士や弁護士、研究者、中小企業団体などによって結成された任意団体で、納税者の権利保護のため、約30年にわたり「納税者権利憲章」の制定を目指して活動している。 ◆「年末調整」があるのは日本だけ!? 平石さんが続ける。 「関心が薄い原因の一つは『年末調整』です。この制度の下では、税金がどういう仕組みで計算され、自分がいくら納めているのかが見えにくい。すべての給与所得者がそうとは言いませんが、全般的に理解が薄い気がします。 ただ、それは国民のせいというより、国が戦後の申告納税制度導入に伴い、納税と年末調整を事業主に義務づけたためです」 年末調整は他の国にもある制度なのだろうか。 「雇用主に対して従業員の年末調整を義務づけている国は、日本だけではないでしょうか。 ドイツでは10人以上に給与を支払っている雇用主に年末調整が義務づけられているようですが、本人の意思によって年末調整を受けなくてもよい選択制になっていると聞きます。 アメリカには年末調整制度はなく、申告制です。給与所得者も自分で確定申告をしますから、やはり納税意識は高くなると思います」