海外にある美術品…マネーロンダリング対策としてのファミリーオフィス、保税倉庫ビジネスが脚光
美術品にかかる輸入関税ゼロ
では、海外に目を向けてみます。国内取引とは異なり、外国貨物については輸入消費税が課税となります。この場合、消費税の納税義務者は事業者に限定されず、その外国貨物を引き取る者が納税義務者となります。 関税定率法では、関税分類は1類から97類まであります。1から加工度が上がって97まであり、加工度の高いものに向かって関税率は低減していきます。書画の税番分類は97類に分類されています。美術品はもっとも加工度が高いとされる97類の「書画」と規定され、関税率はゼロです。節税目的として美術品に着目する人がいるのもうなずけます。
マネーロンダリングと美術品
ファミリーオフィスは、富裕層の投資および資産の管理を行う非公開会社のことで、一般の資産管理会社よりも無形資産等の管理も含みます。日本では、任天堂創業家の資産管理・運用などを行うファミリーオフィス「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」が有名です。海外でも多くのファミリーオフィスが存在しています。 ジェトロ(日本貿易振興機構)の報告書では、スイスのジュネーブにおける保税倉庫ビジネスが紹介されています。それによれば、保管されている美術品等の総額は1,000億ドルともいわれ、マネーロンダリング対策として保管品を電子データで管理して透明性を高めています。また、この保税倉庫の優位性は保税期間が無期限ということで、他国の保税倉庫は一定期間で制限されています。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好