横浜F・マリノス リベンジ成功の理由
「相手のボランチの運動量が多く、うちの2シャドーが消されてしまった。やはり動きが重く、アプローチにも行けなくて苦戦しました」と千葉は悔んだ。もっとも、横浜がゲームを優位に進められたのは、広島が体力面においてハンデを抱えていたからだけではない。 ■モチベーションとコンディションにおいて成功 驚かされたのは、後半のアディショナルタイムを迎えてもなお、横浜の攻守の切り替えが速く、広島のボールホルダーに対し、2人、3人で素早くアプローチしていたことだ。青山敏弘やミキッチに対して、齋藤や富澤清太郎、ドゥトラや中町が終了間際になっても高いテンションで襲い掛かる。そこに、この試合に対する彼らのモチベーションの高さとコンディショニングの成功が見て取れた。 広島も2シャドーの高萩洋次郎が、ディフェンスラインの前まで下がってボールを受けて攻撃を組み立てたり、反対にボランチの青山が高い位置までボールを運んだり、石原直樹が裏を狙って横浜のディフェンスラインを押し下げ、中盤にスペースを作ろうとするなど、工夫は見られた。 野津田岳人や浅野拓磨といったフレッシュなメンバーも送り出し、後半は前半とは比べものにならないくらい横浜陣内へと攻め込んだ。だが、それでも横浜のバランスを崩せず、堅守を攻略できなかった。リーグ連覇へと導いた森保一監督は「疲労があって思っていたほどギアが上がらなかった」としながらも、「今日のマリノスは素晴らしかった。優勝に値するプレーだった」と賛辞を贈った。 ■9年ぶりのタイトルだった横浜F・マリノス 横浜にとって9年ぶりのタイトル。それは、掴みかけながら掌からこぼれ落ちたリーグ戦での借りを返した戦いでもあった。ただし、中村は言う。 「終わりよければ、すべてよし、というわけじゃない」 セットプレーのパターン、後方からのビルドアップ、前からプレスを掛けてくる相手との戦い方、効果的なカウンター、選手層、戦い方の幅……。キャプテンによれば、進歩すべき部分、足りないものは、たくさんあるという。 その点で、メンバーを固定して戦ってきた今季の最後に試合で、レギュラー取りをアピールした端戸の活躍は、アジア・チャンピオンズリーグに参戦し、総力戦となることが予想される来季に向け、大きな収穫になったに違いない。 (文責・飯尾篤史/サッカーライター)