日本の「人口減少」に海外注目...米誌が指摘した「深刻な問題点」とは?
<急速に進む人口減少と高齢化。米ニューズウィークが、日本の社会構造が直面する課題と、その打開策を問う>
日本は、迫り来る「人口の崖」をじっと見つめている。同国の人口は、15年連続で減少している。2023年の出生数は、史上最少の約73万人にまで落ち込んだ。一方で、死亡数は史上最多の約158万人に達した。 「14億人市場」は嘘? 中国人口「本当は10億人」説の衝撃とその理由【注目ニュースを動画で解説】 現在の日本の人口は約1億2500万人だが、今後は驚くべきペースで減少し、厚生労働省の予測では、2070年にはわずか8700万人にまで落ち込むと警告されている。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率は、2023年には1.2と過去最低を更新した。これは、人口置換水準と呼ばれる、国の人口を維持するために必要な数字(2.1)を大幅に割り込んでいる。一方で、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は、2070年までに、現在の30%から約40%に上昇すると推計されている。 こうした状況を受けて、政策立案者の間では切迫感が高まっている。彼らはこれまでも、人口減少傾向を覆すために残された時間は2030年前後までしかないと警告してきた。 日本の人口動態危機は、東アジアの大半の地域にとっては警戒すべき前兆だ。韓国や中国などの近隣諸国も、出生率の急落と、労働力の高齢化という問題への対応を迫られている。複数のアナリストは、これらの国々における課題は、政策の追加よりも、家庭内の役割分担や、職場環境の見直しにあると指摘する。 日本政府や地方自治体は、支援金から、自治体が提供するマッチングアプリまで、ありとあらゆる施策を投入している。石破茂首相は、2024年10月に就任して以来、子育て世帯を支え、「超高齢化」社会へ向かう圧力を緩和するべく一連の施策を発表している。 児童手当の拡充 日本政府は、2023年4月にこども家庭庁を発足させ、2024年度だけで約5兆3000億円の予算を確保した。さらに今後3年間は、1年あたり約3兆6000億円が、児童手当の拡充や教育支援などに投入される計画だ。これらの施策により、カップルたちに、子どもを持つことは必ずしも家計を危機に陥れる要因にはならない、と納得してもらえるのではないかと政府当局は期待をかけている。 外国人労働者への門戸開放 日本はまた、厳格なことで悪名高い移民政策についても緩和を始めている。高齢者介護や農業などの産業が労働力を切実に求めているという事情から、政府は2024年に入り、入国ビザに関する規制を緩和し、在留期間の延長や転職、家族の呼び寄せができる外国人労働者の対象を拡大した。 日本の労働力人口が急減し続ける中で、2040年までに外国人労働者の数を3倍にまで増やしたいと政府当局は考えている。 ワークライフバランスの改善 働き手に過労を強いる日本の労働文化は、かなり以前から、子どもを持つことを阻害する要因として指摘されてきた。この傾向は特に、キャリアにおけるチャンスを逸することを恐れる女性の間で顕著だ。東京都は2025年4月から、16万人強の都職員に週休3日制を導入する方針だ。これとは別の政策として、小学校1~3年の子どもを育てる都職員が、減給と引き換えに1日最大2時間勤務時間を短縮できる「子育て部分休暇」の制度も導入される。 オックスフォード大学インターネット研究所/AI倫理研究所の准教授で、日本の労働慣行が社会に及ぼす影響を研究しているエカテリーナ・ヘルトグなど複数の専門家は、より多くの男性が進んで子育ての務めを担わない限り、本当の意味での変化は起きないと警告している。 これは、男性も取得できる12カ月の育児休暇を活用することを意味する。ある研究によると、実際にこの休暇を取得した男性の割合は、2019年の時点でわずか3%強にとどまっているという。 婚姻数の減少 もう1つの課題は婚姻にある。日本をはじめとする東アジアの社会では、出生数と婚姻件数の間には高い相関性がある。日本人の婚姻件数は2023年、この90年間で初めて50万組を割り込んだ ヘルトグは婚姻制度に関して、伝統的な価値観がいまだに強い影響を及ぼしている点を強調した。 「日本や韓国における婚姻件数の推移は、経済状況や、それに関連する男女の役割分担によって顕著な影響を受けている」と、ヘルトグは本誌に語った。ヘルトグは、「男性が一家の大黒柱になるべきという伝統的な価値観」を例に挙げ、低収入の男性たちが、結婚を先延ばししたり、完全にあきらめたりする傾向がある点を指摘した。 「その他の重要な要因としては、『子どもが年老いた親の面倒を見るべき』とする、家庭に関する規範がある。そして、数十年にわたって出生率が低い状態が続く社会で、こうした規範に沿った交渉が難しくなっている点が挙げられる」と、ヘルトグは付け加えた。 老親介護の責任は、伝統的に長男とその配偶者に課せられてきた。だが、若い世代の女性たちには、義両親よりも自身の両親を優先したいという希望があり、軋轢が生じる場合もある、とヘルトグは指摘した。
マイカ・マッカートニー