スポーツカー好きのオーナーによる維持の秘けつは「予防整備を欠かさないこと」|マツダ戦記|1986年式 マツダ サバンナRX-7 GTリミテッド
7年半というモデルライフを過ごしたSA22Cからバトンを受け取ったのが、1985年に登場したFC3Sだ。そのFC3Sに求められたのは純粋にスポーツカーとしての進化で、「新しい走りの価値の創造と走る喜びの提供」を基本テーマに開発。 SA22Cの持つ小型・軽量スポーツカーというイメージから一転し、重厚感のある本格スポーツカーへと生まれ変わった。 【画像17枚】13B型ツインスクロールターボで本格派スポーツカーへ進化 見どころは多岐にわたるが、なんと言っても大幅にパワーアップを果たしたエンジンだろう。 SA22Cが搭載していた12A型よりも排気量の大きい13B型を採用し、それにターボをドッキング。タービンは低回転域と高回転域でタービンのA/R比を変化させ、全域でつねに高効率の過給特性を発揮させるツインスクロールターボを採用。 これにより、ロータリーエンジンのウイークポイントである低速トルクの細さをカバーしている。 加えて、空冷式インタークーラーをエンジンの真上に直接配置。この手法は、タービンから吸気ポートまでの配管を短くして冷えた空気を即座に導入することができるので、ターボラグの解消につながる。また、コンパクトなロータリーエンジンだから可能なレイアウトとも言えるだろう。 そして、排気系にデュアルエキゾーストシステムを用いたことで排圧が大幅に下がり、パワーアップを実現。 さらに、スポーツカーらしいエキゾーストサウンドをもたらしている。 独自のマルチリンクサスペンションによってシャープなハンドリングと安定したコーナリングを実現 このハイパワーを路面にロスなく伝え、スポーツカーならではのハンドリングを実現するために開発されたサスペンションにも注目。 フロントこそオーソドックスなストラットだが、リアには、トーコントロールハブ付きのマルチリンクを採用。 これは、クイックな操縦性を優先させたい領域ではリアタイヤを積極的にトーアウトさせ、安定性が求められる高速域ではトーインさせるという機構。 これにより、シャープなハンドリングと高速での安定したコーナリングを可能にしたのである。さらに、エンジンをフロントミッドシップに配したことで前後の重量配分は理想に近い50.5対49.5となり、抜群のハンドリングを実現した。 このようにして優れた運動性能を手に入れたFC3Sは、スタイリングもスポーツカーそのもの。後期SA22Cよりも全長は10mm短縮されたが全幅は20mm拡大され、より幅広感がアップ。 そしてワイドなタイヤを覆うためのブリスターフェンダーを採用し、空気の流れをスムーズにするためにフラッシュサーフェス化を徹底した結果、Cd値0.32を達成した。 なお、そのスタイリングがポルシェ944に似ていると言われることもあったが、実際のパフォーマンスもポルシェに肩を並べるほどだったのだ。 ディーラー整備されていた前期型を手に入れたオーナー この個体のオーナーは、これまでにR32GT-Rやロータス・ヨーロッパなどを所有してきたスポーツカー好き。 一時期はさまざまな事情からミニバンに乗っていたものの、「もう一度スポーツカーに乗りたい」という気持ちが強まり、10代の頃にあこがれていたFC3Sを選択。 そして「乗るなら80年代を感じさせる黒モール角形テールの前期」という条件で探して間もなく、ディーラー整備されていたワンオーナーのノーマル車に巡り合えたという。 そんなオーナーは、「予防整備を欠かさないことで長く安心して楽しむことができる」と秘けつを語った。 主要諸元 SPECIFICATIONS 1986年式 サバンナRX-7 GTリミテッド(FC3S) ●全長×全幅×全高(㎜) 4310×1690×1270 ●ホイールベース(㎜) 2430 ●トレッド前/後(㎜) 1450/1440 ●車両重量(㎏) 1280 ●エンジン型式 13B型 ●エンジン種類 2ローター・ロータリーターボ ●総排気量(cc) 654×2 ●圧縮比8.5:1 ●最高出力(ps/rpm) 185/6500 ●最大トルク(㎏-m/rpm) 25.0/3500 ●燃料タンク(ℓ) 63 ●変速比 1速3.483/2速2.015/3速1.391/4速1.000/5速0.806/後退3.288最終減速比 4.100 ●ステアリング ラック&ピニオン ●サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク ●ブレーキ ベンチレーテッドディスク(前後とも) ●タイヤ 205/60R15(前後とも) ●発売当時価格 303.8万円 初出:ハチマルヒーロー vol.47 2018年 5月号 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
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