「陣痛に耐えるのは当然」「甘え」の声も…出産の選択肢“無痛分娩” 5年で倍増もまだ全体の1割
5年で倍増 選択者が増加する「無痛分娩」
出産の際、麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」。選ぶ女性は増えている一方、割合としては全分娩数の約12%と主流ではありません。一体なぜなのでしょうか。 日本産婦人科医会の調査によりますと、分娩全体の数が減る中、無痛分娩の数はこの5年で倍近くまで増加。東海地方でもこの5年で、年間約3500件から約7500件まで増えました。 それでも、全分娩数における割合は11.6%(2023年発表時点)にとどまっています。アメリカでは73%、フランスでは83%の妊婦が、無痛分娩を選択していて(2018年時点)、日本の普及率と比べると大きな差があります。
無痛分娩のメリットとリスク
無痛分娩で最も一般的な方法は「硬膜外麻酔法」で、細いチューブを背中から硬膜外腔に入れて麻酔薬を少量ずつ注入することによって、陣痛や出産の痛みを取り除く方法です。下半身だけへの痛み止めなので、意識はあり、おなかの張りや赤ちゃんが移動する感覚は残ったまま出産に臨むことができます。 毎年500人以上に無痛分娩を行っている名古屋市名東区「名古屋バースクリニック」。柵木善旭院長に、無痛分娩のメリットやリスクについて聞きました。 「無痛分娩の最大のメリットは当然、『産痛の緩和』です。産痛だけでなく、産後の膣会陰にできた裂傷に対する縫合の痛みも軽減されます。また、それに付随して、『分娩の回復が早く、産後の子育てへの体力が残ること』『分娩に対する恐怖心が減り、次の妊娠への前向きな気持ちが芽生えること』などもメリットとしてあげられます」(名古屋バースクリニック・柵木善旭院長) リスクもゼロではありません。 「分娩への影響としては、『陣痛が弱くなること』『娩出力が低下し、分娩第二期が延長することで、吸引・鉗子分娩の確率が増加すること』が知られています。合併症としては、発熱やかゆみ、麻酔後に発生する頭痛などがあげられます。そして、非常に稀ですが、麻酔による重篤な事故のリスクがあります。これは、麻酔技術や全身管理体制の改良によって、自然分娩との差が認められないとする報告も多数あります」(名古屋バースクリニック・柵木善旭院長)