「陣痛に耐えるのは当然」「甘え」の声も…出産の選択肢“無痛分娩” 5年で倍増もまだ全体の1割
産科施設の3分の2は非対応
妊婦のニーズは高まっているものの、すべての産科施設が無痛分娩を実施しているわけではありません。 記者の私自身、現在妊娠9カ月の妊婦。今夏に、愛知県内で出産予定です。 恥ずかしながら、自分が妊娠するまで、分娩方法について詳しく調べたり考えたりしてきませんでした。妊娠がわかり、最寄りの産科施設に通い始めて少し経ってから、「少しでも痛みを減らしたい」と思い、無痛分娩の選択肢を考え始めたのですが… 時すでに遅し、私が通う産科施設は、無痛分娩に対応していないことが判明。自分の下調べの甘さが招いた結果ですが、泣く泣く、無痛分娩を諦めたのです。 調べてみると、愛知県内で無痛分娩を実施しているのは、約120ある産科施設のうち約40施設(愛知県産婦人科医会などの調査による)。非対応の施設の方が多いのが現状です。無痛分娩は、当たり前の選択肢ではないことを知りました。
対応しているのは都市部ばかり
無痛分娩が可能な施設であっても、24時間体制で麻酔処置ができるオンデマンド無痛分娩が可能な施設は名古屋市内でもごく僅かです。柵木医師は、無痛分娩をおこなうには「医療者の技術と管理ができる人員が必要」といいます。 「前提として、日本の無痛分娩の多くは関東を中心とした都心部(東京や横浜)で実施されています。愛知県での無痛分娩も、名古屋市を中心とした尾張地区がほとんどで、三河地区での実施はかなり限定されています」(名古屋バースクリニック・柵木千尋医師) 地方では、無痛分娩のニーズが都市部ほど高くない傾向にあり、限られた分娩施設において積極的に取り入れようとする動きは、まだそれほど多くないようです。
追加で約10万円必要
また、無痛分娩のためには、追加で10万円程度かかります。 現在、出産は健康保険の適用外のため、代わりに出産育児一時金として原則50万円が給付されます。しかし、通常の出産費用が約50万円のため、無痛分娩を選ぶと、超えた分は自費で払う必要があります。 厚労省によりますと、全国の出産費用はこの10年で平均約6万5000円増加。去年、出産育児一時金が増額されたものの、無痛分娩の約10万円はほぼ自費で払わなくてはならないという状況です。