働く母親は「迷惑」か。時短勤務がもたらす不公平感の問題 (桐生由紀 社会保険労務士)
厚生労働省は昨年末、2歳未満の子どもを育てながら時短勤務をする人に対して、賃金の10%に相当する額の給付金を支給する方針を示しました。時短勤務によって減る給与分を補填する考えです。 「育休後、子育てのために時短勤務をしたいが、収入が減ってしまう」と制度の利用を躊躇する人にとって、給付金の支給は時短勤務のハードルを下げるでしょう。 一方、「時短勤務だと重要な仕事を任せられなくなりキャリアに影響するのでは」とキャリアへの不安から時短勤務の利用をためらう人もいます。いわゆる「マミートラック」です。マミートラックの問題は給付金で給与を補填しただけでは解決できません。 また、会社の体制を上回る制度利用者の増加や長期化により、制度を利用していない人の不公平感がつのり、時短勤務を利用する社員に対して「ずるい、迷惑だ」という相談も増えています。しかし、本当の迷惑は「フルタイム=長時間労働」の文化です。 雇用の専門家である社労士の立場から、時短勤務の利用者が「迷惑」と言われてしまう構造的な問題や制度の課題、今後求められる制度や組織づくりについて考えてみたいと思います。
■育児短時間勤務制度とは?
そもそも、育児短時間勤務制度とはどのような制度なのでしょうか。 育児短時間勤務制度とは、原則として1日の勤務時間を6時間に短縮できる制度で、通称「時短勤務制度」と言われています。 育児・介護休業法23条で定められており、要件を満たした労働者から申し出があった場合、会社は原則としてその申し出を拒むことはできません。 時短勤務制度は誰でも利用できるというわけではありません。育児による時短勤務は、以下のすべての条件に当てはまる人が対象となります。 ・3歳未満の子を養育する労働者であること ・1日の所定労働時間が6時間以下でないこと ・日々雇用される者(日雇い労働者や30日未満の有期契約労働者)でないこと ・時短勤務制度が適用される期間に育児休業を取得していないこと ・労使協定で定められた適用除外者でないこと 時短勤務制度というと、フルタイムの正社員にしか適用されない制度だと思っている人が多いですが、上記の条件を満たす人ならパート・アルバイト従業員や派遣社員も制度を利用することができます。 要件を満たした従業員は、フルタイムの勤務時間を原則6時間に短縮できます。例えば、所定労働時間が9時から18時までの会社の場合、9時から16時までの就業に短縮できるイメージです。 育児・介護休業法では「原則として6時間」とされていますが、何時間以上にしなければならないという最低勤務時間の定めはありません。企業の判断でより短い時間に設定することも可能です。時短勤務制度は各会社によって異なりますので利用したい場合は会社に確認してみてください。