「人手不足倒産」が起きるほど深刻化する労働力不足問題…「待遇を良くすれば解決」とはいかない理由【人材のプロが解説】
業界によっては「人手不足倒産」が起きるほど深刻な労働力不足が続いています。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長 福留拓人氏が、人手不足で経営難に陥る企業の状況と対応策について詳しく解説します。 【ランキング】都道府県「大学(学部)進学率」…3位「神奈川」2位「京都」1位は?
労働力不足で「人手不足倒産」が起きるほど深刻な状況に
みなさまも報道などでご存じのように、現在の日本では人手不足というキーワードを目にしない日がないような状況で、業界によっては「人手不足倒産」が起きるほど深刻な労働力不足が続いています。 人手不足倒産とは「事業を運営する上で必要な人材を確保できないことが原因で倒産してしまうこと」を指します。すなわち会社の経営状態が健全で黒字であっても、人手不足という要因によって倒産してしまうことがあるということです。不思議な感じがするかもしれませんが、まぎれもない事実です。 もともと黒字倒産というのはキャッシュフロー(お金の流れ)のやりくりがうまくいかないため、利益が出ているにもかかわらず倒産してしまうというのが主な現象でした。しかし、現在は人手不足が黒字倒産の大きな要因になっています。 「人手不足は事業の規模を縮小すれば回避できるのではないか」と思われがちですが、それほど単純なものではありません。業種によってさまざまではありますが、例えば店舗を構えて事業を運営している飲食業の経営者を例に取ってみましょう。 すでに店舗を有しているということは、固定費(家賃・水道光熱費・リース料など)が発生しているわけですから、お店を営業していなくてもお金は出て行きます。また、言うまでもなくその店舗で働いてくれるスタッフを確保しなければお店を開くことができません。お店を開いて売上を得なければ固定費を回収することができなくなります。 このように、従業員が集まらないという事態が長期化したり深刻化したりすると、倒産の要因になるわけです。経営全般としては、人手不足に陥ると開業というスタートラインにさえ立てなくなります。これがいま問題になっている人手不足倒産の典型的な例です。