九里亜蓮(33)海外FAから国内FAへ“すり替わり”のナゾ解き 大リーグ挑戦タテに「反感抑制」で“満額回答”
昨オフも西川がオリックスにFA移籍
その前に今オフの国内FA移籍を巡り、最も注目された阪神の大山悠輔内野手のケースを振り返りたい。 大山は巨人移籍と悩んだ末に残留を選んだ。一時は関東出身のため関西の水に合わないことなどを理由に、金銭面でも優位に立った巨人移籍が有力視されていた。関西在住の元NPB球団監督はしかし、史上初の阪神から巨人へのFA移籍がいばらの道だったことを強調する。 「私は終始、阪神から巨人の移籍はないと思っていました。仮に大山が巨人選手として甲子園でプレーすれば、客席は殺伐とした雰囲気に包まれていたことは容易に想像できます。そういう環境では、いかにプロでも選手が本来の力を発揮するというのは……。どんなにメンタルが強い選手でも躊躇するものでしょう」 大山の慰留に成功したことで、阪神球団も球界随一の熱狂的ファンからの批判を回避した。 「宿敵の巨人に手塩にかけた主砲を持っていかれるわけですから……。ファンの怒りの矛先は球団にも向けられていたはずです。大山にも球団にも最善の結末と言えました」(同) その一方、九里は、同一リーグへの移籍を検討した大山とは異なり、他のリーグの球団を選択した。ファンの反発の大きさは阪神から巨人に移籍するケースとは比べるべくもないものの、昨オフの西川龍馬外野手に続き、2年連続で広島からオリックスへのFA選手の流出となった。広島がオリックスの選手供給源になっている印象は拭い切れない。
丸には「宣言残留」を認めたが……
さる元パ・リーグ球団社長は自身がFA選手の慰留に失敗した当時を回顧する。 「資金が潤沢な球団ではなかったため、出せるオファーには限度がありました。選手がより良い条件の球団に惹かれるのは仕方ないと理解していました。そんな中でも生え抜き選手の慰留に全力を尽くしたという事実を、ファンに理解してもらうことに注力しました」 広島は18年オフに丸佳浩外野手が巨人にFA移籍した際、宣言残留を認めた。一方で今回の九里には「未定」とのスタンスで、宣言残留を認めるとも認めないとも明確にしなかった。 「2年連続MVPでリーグ3連覇に貢献した当時の丸と、今の九里ではチームにおける戦力として意味合いは違います。かといって認めないのは、ここまで広島のために先発で投げ続けてきた投手がメジャー挑戦で不調に終わった時に出戻りを許さないのかという冷たい印象を与えかねません。逆にはっきりと認めれば、国内他球団との争奪戦になった時にどのように残留交渉をしたのか、責任を含めて問われます。ここをはっきりさせなかったことも広島ファンの反感を抑えられた要因だったのではないでしょうか」 同元社長はこう分析した上で、九里の代理人サイドの思惑にも言及した。