「103万円」引き上げをアルバイト学生は歓迎 年収の壁は他にも、「皆に恩恵を」の声
自民、公明と国民民主の3党合意で、年収103万円を超えると、所得税が生じる「103万円の壁」の上限が引き上げられる見通しとなった。対象となるアルバイト学生らは期待を寄せるが、壁は複数存在。それぞれの壁に応じた「働き方」を強いられており、制度改革の行方を不安視する人は少なくない。 【図で解説】3つの「年収の壁」のイメージ ■稼ぎたいのに働けない 20日午前、東京都練馬区のスーパー「アキダイ関町本店」。多くの買い物客でにぎわう中、従業員らが接客や商品の搬入に忙殺されていた。「稼ぎたいのに、働けないのはもったいない」。10時間以上のフルタイム勤務を週2回こなすアルバイトの大学3年、高橋陽太(ひなた)さん(20)が期待するのは、「103万円の壁」の上限引き上げだ。 年収103万円を超えると、親の扶養控除が適用されなくなり、所得税の課税対象となる。このため、高橋さんは手取りの平均が月8万円あまりになるようにバイトを抑えている。年末にかけては繁忙期で人手が求められているが「壁を越えないように気をつけないと…。遊びにもお金を使いたいし、働けるならできるだけ働きたいんだけど」と訴える。 一方、高橋さんの同僚で、小中学生の娘2人を育てる40代のパート女性従業員が直面しているのは、「106万円の壁」だ。上限を超えると、配偶者の扶養から外れ、社会保険料の支払いが義務付けられる。「計算しながら働いている。壁を越えるのが怖い。本当になくしてほしい」。1日平均4時間45分、週4日の勤務。労働時間を5時間にすると、上限に達してしまう。 厚生労働省は106万円の壁の撤廃を検討中だ。ただ、週20時間未満の短時間労働に限ることを前提に調整している。 ■収入が必要なのは「今」 社会保険料を納めれば、将来的に受け取る公的年金は手厚くなる。しかし、子育ての出費などで、収入が必要となるのは「今」だ。女性がこれまで通りのペースで働くと、週20時間を超え、社会保険料の支払いが生じて手取りは年15万円ほど減ってしまう。 月にすると1万円を超える。女性は「週20時間の制限だけが残ると、子供の体調不良などで欠勤した分を翌週の勤務を増やして取り戻すことも難しくなる。106万円の壁がなくなっても意味がなくなる」と不安そうに話した。