FPが試算!10月上昇確定の「変動金利型住宅ローン」…「5年ルール」「125%ルール」の落とし穴
返済の残期間があと10年の人は……
次に、残期間が10年、残高が1500万円など、返済が進む中で、5年ルールの節目を迎えるケースを考えてみよう。 こちらは、慌てて動く必要はなさそうだ。 金利上昇の影響を強く受けるのは、残期間が長く、残高が多い場合だ。家計への負担感には個人差がある。残債の金額に関わらず、変動型を利用している場合は、試算しておきたい。 家計収支に余裕があれば、1万円の増額は平気かもしれないが、毎月の収入と支出がトントンで余裕がなければ、1万円の増額で家計は赤字になる。金利の上昇に家計が耐えられるかの確認がポイントだ。 なお、「金利が上昇したらどうしよう」と不安で夜も眠れないようなケースは、固定金利に切り替えたり、繰上返済で残債を減らしたり、という方法が選択肢だろう。固定型の住宅ローンに借り換えるという方法もあるが、コストが高くなるため優先順位は低くなる。同じ金融機関で金利タイプを変更するなど、コスト重視でのプランニングが現実的だ。返済中の金融機関へ相談してみよう。 ◆これから「新規」で借り入れを考えている人は…… 最後に、新規で借り入れる場合も考えておこう。 新居を購入し、住宅ローンを初めて利用するケースでは、比較対象となる従前の返済額はない。ひとえに、家計収支から無理なく返済可能かどうかという点となる。変動金利のほか、固定金利や変動金利と固定金利を組み合わせる「ミックスプラン」も検討しよう。 また、資金計画時と融資実行の時間差にも注意したい。実際の返済額を算出する金利は、融資実行時の金利だ。資金計画の時点から金利が上昇している場合もあるに違いない。金利差があるなら早急に再試算が必要だ。金利が上昇トレンドでも家計が苦しくならないか、確認しておこう。金利ある世界をなめてはいけない。 ◆「月5万円までは、我が家は大丈夫」……金利上昇時の家計への影響を試算 日銀は、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%としている。金利上昇に加え、物価上昇率2%の想定ならば、賃金アップの期待値だけでは心もとない。自助努力が欠かせない。 家計支出の見直し、資産運用など、総力戦の戦いとなる。物価が安定的に2%上昇していく世界では、金利が2%プラスになることはさほど不思議なことではない。早期に見切って、固定金利へ切り換えることも選択肢の一つだが、借入状況、家計の状況、働き方など、総合的に判断することが重要だ。 金利が上昇しても、家計に余裕があれば、上昇分を家計収支で吸収できる。例えば、「2%上昇したら4万円アップする見込み。我が家は、5万円アップまでは大丈夫」など、金利上昇時の家計への影響を試算していれば、慌てなくて済むだろう。 ただし、金利が上昇し、家計の余裕資金を住宅ローン返済に投入すると、将来に必要となる老後資金等の予算が減りかねない。今日の余裕資金は、将来の必要資金であることも、肝に銘じておおう。 取材・文:大石泉 NPO法人日本FP協会認定上級ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。キャリアコンサルタント。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。老若男女を対象に身近な新聞をつかった経済教育、キャリアデザイン、資産形成などの講座や研修を大学、企業へ展開。個人向けには、客観的なファイナンシャルプランニング、ライフ・キャリアプランニングを提供している。金融リテラシーの普及活動が評価され、金融庁と日本銀行から’14年度金融知識普及功績者として評される。
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