FPが試算!10月上昇確定の「変動金利型住宅ローン」…「5年ルール」「125%ルール」の落とし穴
【シミュレーション】返済開始後5年経過の人の場合
では、返済開始後5年が経過、6回目の10月1日を迎えるケースでシミュレーションしてみよう。 【試算例①】は、5年前に変動金利0.475%で4000万円を借り入れ、途中で金利が0.375%となり、9月の短プラの上昇幅+0.15%に合わせ、10月から住宅ローン金利が0.525%になるケース。その後は、毎年+0.25%。上昇トレンドが3年間続くと想定した。 試算例①の例だと、今回の返済額の上昇は1000円未満だ。日々のちょっとしたやりくりで対応可能な金額だと言える。その後も、毎年0.25%ずつ3年間、金利が上昇すると11年目の返済額は、11万円台となる。当初から12%強の上昇となるが、額にすると1万3000円強。賃金の伸びに期待しつつ、家計支出の見直しで対応する防衛作戦となりそうだ。 しかし、先日、日銀の田村審議委員が岡山県金融経済懇談会の挨拶の中で、中立金利にふれる場面があり、「’26年度までの見通し期間の後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で、必要だと考えています」との発言があった。 【試算例②】は、上記の発言を受け、’26年度・短期金利・1%程度を元に、試算例①より少し早めの金利上昇を想定したものだ。10月のプラス0.15%の上昇以降、半年ごとに0.25%ずつ3年間上昇すると想定してみた。 試算例②でも、5年ルールが働き、5年間は返済額に変更はない。だが、その間も、金利動向に応じて、返済額の中の原本返済と利払い部分の割合が変わる。 6年目以降の金利上昇トレンドにより、返済額は変わらないが、確実に利払い分が増え、元本返済に回る額が減っていく。そして、11年目。返済額は、2万6000円強増え、13万円台に突入。年間では、約31万2000円のプラスとなる試算だ。 さらに、試算例②では11年目に125%ルールが発動し、返済額が従前返済額の125%に抑えられる。と同時に、「未払利息」が発生する。試算例②の16年目に注目いただきたい。すでに金利の上昇トレンドは終わっているが、返済額が上昇している。これは、未払利息の調整によるものだ。 早期に金利が上昇するならば、「あの時、固定金利に切り替えておけばよかった」と後悔することになるかもしれない。が、金利の動きを完全に予測することは不可能だ。 6年目以降の5年ルールが効いている間に、借り換えや繰上返済など、あらゆる手段を検証しておこう。金利は、動き出すと早いといわれる。行動を起こすタイミングを見逃さないことが肝心だ。