日本人がわかっていない「アメリカ経済」がなんだかんだ好調な根本理由、知られざるバイデノミクス成果とは?
■インフレはバイデンの責任ではない 私は、ロングとバートンの比較結果は、実際にはバイデンとトランプの経済運営における成果の差異を過小評価していると指摘したい。先進国に蔓延したパンデミック後のインフレをバイデンの責任にするべき理由はほとんどなく、前述のように、アメリカはこの課題をたいていの貿易相手国よりもうまく克服している。 加えて、バイデン政権が長期的に成長と経済的平等を強化する政策に軸足を移しているのに対し、トランプ政権は富裕層や権力者を優遇する減税による短期的な景気刺激策に注力。アメリカでは政治が極端に二極化しているにもかかわらず、バイデン政権は、インフラ投資や製造能力強化、グリーン移行推進のための主要法案を可決することに成功している。
また、バイデン政権は、オバマ政権やトランプ政権とは一線を画し、賢明にも「マーケットクラフト」に取り組んできた。 これは、独占禁止法や労働規制などの市場ルールの改革を意味するが、この目的は競争やイノベーションの促進、そして、経済と政治の力関係のバランス化である。その点で、バイデン政権は1980年代以降、アメリカの経済政策を支配してきた新自由主義のパラダイムを、貿易保護に専念してきたトランプ政権よりもはるかに生産的な方法で打破した。
こうした中、ハリス陣営は現政権が独占企業と闘っているほか、薬価の引き下げを実現しようとしてきたこと、そして、大統領選に勝利すれば、こうした取り組みをさらに促進すると強調している。 こうした実績を残しているにもかかわらず、バイデン・ハリスの経済政策はこれほどまでに評価されないのだろうか。1つには、国民がインフレを好んでおらず、インフレをバイデン政権の責任にしていることが挙げられる。 物価上昇率は低下しているが、物価の合計値は低下しておらず、物価はまだ高すぎるという一般的な認識が、雇用や賃金の成長などほかの成果を圧倒している。ハリス陣営はこうした認識を改めるのに苦慮するかもしれない。