セブンのMBO検討、ファミマ親会社の伊藤忠出資でコンビニ業界のバランス崩れる可能性も
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が13日発表した自社買収(MBO)の資金は、創業家以外に、メガバンクからの融資のほか、伊藤忠商事からの出資で調達する案が検討されている。ただ、伊藤忠は国内コンビニ大手のファミリマートの親会社で、MBOが成立した場合、同HD傘下で最大手のセブンーイレブンとファミマの協業が進む可能性もある。そうなれば、ローソンが大きく後塵を拝すのは必至で、コンビニ業界のバランスが崩れるとの指摘もある。 【写真】手ごろな価格帯に設定されたセブンーイレブン・ジャパンの商品 ■セブンとファミマ連合誕生か 「仮にセブンとファミマが協業すれば、商品企画や物流の効率化以上に、店舗の売り上げ情報に加え、通販などデジタル経済圏を含めた総合経済圏を共有化できる。そのメリットはものすごく大きくなる」。みずほ銀行で産業動向分析などに従事した流通アナリストの中井彰人氏は、こう分析する。 人口減少が続く国内では、コンビニの店舗数が飽和状態となっており、成長戦略が描きにくい構造となっている。伊藤忠はコンビニ事業の成長に向けた次の一手を模索する中で、「(今回のMBOは)ファミマを餌にして、セブンの中に入り込んで、同盟を組むきっかけになる」と中井氏は指摘する。収益力で最大手のセブンと、それに次ぐ収益規模を誇るファミマとの連合となれば、「ローソンは一気に引き離され、大手コンビニ3社で築かれていた国内コンビニ業界のバランスが崩れる可能性もある」と話す。 ■成長厳しい国内コンビニ事業 国内の大手コンビニでは、ローソンが三菱商事と携帯大手のKDDIによる株式公開買い付け(TOB)に伴い、今年7月に上場廃止となった。KDDIの通信事業とローソンが展開するコンビニ店舗を融合させ、新たなサービスを打ち出すこと成長戦略を描く方針を示す。 一方で、ファミマも親会社の伊藤忠によるTOBに伴い,、2020年に非上場となり、伊藤忠の完全子会社となっている。最近は伊藤忠が強みとしている繊維分野の力を生かし、「コンビニエンスウェア」という衣服のヒット商品を生み出すことで、新たな成長領域を広げている。 今回のセブンのMBOは、株式を非上場化することで、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案に対抗する狙いがあるとみられる。
「伊藤忠はこのセブンの買収提案への対応を注視し、素早く動いたのは間違いない」と中井氏は推測する。一部では、9兆円規模でセブン&アイの全株式を買い取り、そのうちの8%超を持つ同社の創業家や伊藤忠などが3兆円程度を出資、主力取引行の三井住友フィナンシャルグループなどメガバンク3行が6兆円規模を融資する方向で検討されているとの報道もある。(西村利也)