奥能登豪雨後、石川県の愛護センターは犬や猫の引き取り数が増加 収容数は限界に
私が代表理事を務める「一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会」では、2024年1月1日の能登半島地震の発災後、環境省動物愛護管理室のお声かけで、石川県と連携協働して被災猫を東京で譲渡する活動を続けている。奥能登では9月下旬に激しい雨が降り続き、地震で脆弱(ぜいじゃく)になっていた地盤に土砂崩れが起きて河川が氾濫(はんらん)。輪島市、珠洲市、能登町では、地震災害に追い打ちをかけるような豪雨災害となった。 奥能登豪雨後、石川県の愛護センターは犬や猫の引き取り数が増加
「引き取るに引き取れない」
「緊急のお願いです。猫4匹を引き受けていただけないでしょうか」。石川県が運営する「いしかわ動物愛護センター」の職員(獣医師)からメールが届いたのは、豪雨災害から数日後のことだった。奥能登の家族から猫たちの引き取りを相談されているという。 家族からの写真4枚が添付されていて、どれほど可愛がられていたのかが見て取れた。サンタの帽子をかぶっている三毛白のミントちゃんが8歳7カ月、キジ白のマリちゃんとみかんちゃんが7歳4カ月、三毛白鼻チョビのまどかちゃんが5歳5カ月。センターでは引き取りが増え、収容可能な頭数に近づきつつある。県内で成猫を譲渡するのは難しく、(殺処分ゼロを実現・維持してきた石川県としては)「引き取るに引き取れない」とのことだった。私たちは4匹を引き受けることを決めた。 10月3日、協会の業務執行理事、古川尚美と私は、雨の降る中、奥能登を目指した。「のと里山海道」は、5月9日に走行した時は一車線通行だったが、ほとんどが二車線になっていて、復旧が進みつつあると感じた。しかし、輪島市に近づくと、豪雨災害の爪痕が生々しい状態だった。川沿いの道はドロドロの土砂に覆われ、倒木や流木が流れ込んでいた。輪島市役所のすぐ横を流れる川も氾濫して、水が橋まで到達し、周辺の建物も浸水したという。 石川県能登北部保健福祉センターを訪ねた。こちらの建物も、川からあふれ出た水で土台の一部が損壊している。生活環境課の獣医師、杉浦文惠課長に話を聞くと、私たちが県から引き受ける4匹は、珠洲市の家族が完全室内飼育で大事にしていた猫たちだという。家族は地震で被災したが、猫たちと一緒に再建を目指していた。けれども、このたびの豪雨災害で住居を失い、猫たちを手放さざるを得なくなった。言うまでもなく、猫たちとの別れは、涙ながらのつらい決断だった。