「最低賃金」どうなる? 「時給1500円」求める声も【WBS】
“時給上げられない”店では異変
人材確保のため、やむを得ず時給を引き上げる企業がある一方、これ以上の賃金の引き上げは到底厳しいという店もあります。 都内にある地元密着型のスーパー「たつみチェーン」。長年、東京都の最低賃金とほぼ同額の時給を支給してきました。現在も、時給は東京都の最低賃金と同様、「1113円」。 時給を上げたくても、上げられない理由があるといいます。 「7月1日からの値上げリスト。特に目立つのがノリ」(「たつみチェーン」豊洲店の村松義康店長) 商品の仕入れ価格が値上がりする一方で、商品価格には十分転嫁できない状況が続いています。売り上げも、去年に比べ6%減ったといいます。 時給を上げられない中、このスーパーでは50種類ほどの出来たての総菜を、以前は毎日つくっていましたが、今は平日のみにしました。 「スタッフが退職した。4人です」(村松店長) キッチンスタッフの不足により毎日の提供が難しくなったのです。村松店長は、仮に時給を1500円に引き上げた場合は「利益率も何もない。赤字。もうこのあたりで店を閉めることになるのでは」と話します。 本格化する今年度の最低賃金を巡る議論。労働政策に詳しい日本総研客員研究員の山田久さんは、今年度の見通しについて「結果的には去年の40数円が基本。若干の上乗せの可能性もある。物価自体が上がる状態がいまだに続いている。人手不足が深刻になっているので、中小企業も賃上げしないと人が辞めてしまう」と話します。
“隣県格差”も課題に?
では全国の最低賃金はどうなっているのでしょうか。 最低賃金が高いほど青色が濃く、低いほど薄くなるように示した地図を見ると、東京の周辺は 最低賃金が高く、逆に九州や四国では最低賃金が低くなっているのがわかります。
ランキングで見ると1位は東京1113円。次に神奈川、大阪と続いています。一方で、最下位は岩手の893円で、東京より220円近く低くなっています。ここに沖縄や徳島などが続きます。 こうした最低賃金の格差が課題を生んでいます。特に隣り合う県での格差です。 例えば茨城は953円、栃木が954円、群馬は935円と北関東3県の最低賃金が900円台なのに対して、隣り合う埼玉や千葉は全国でも上位に入る1020円台と高額なんです。 これでは働く人が給料の高いところに出ていってしまうという課題が出てきます。いわば労働力の奪い合いです。茨城県の大井川知事は「他県との格差是正などから、最低賃金を990円程度まで引き上げるべき」と主張しました。 しかし、賃金を払う側の日本商工会議所の小林会頭は慎重です。 「近隣県との競争ではなくて、支払い能力を考えて(最低賃金の引き上げを)してほしい」 最低賃金が上がる中、地域間の格差是正という課題が突き付けられています。 ※ワールドビジネスサテライト