「たかが選手が!」渡辺恒雄さん98歳で死去…強烈イメージの裏で「誰に対しても謙虚だった」と関係者が口を揃える“本当の姿”
「誰に対しても謙虚」議員からは評判の声
一介の政治記者からメディア界の頂点にのぼりつめるまでは「腕力」も必要だったに違いない。政界の実力者の懐に次々と飛び込み、それぞれの信頼を得ながら時に政界を動かすほどの力を持っていったのは事実だ。ただ、筆者が知る「ナベツネ像」には一般的なイメージとは異なる側面がある。 ある日、自民党幹事長を務めた加藤紘一氏はこのように語っていた。「ツネさんが本当にすごいのは、誰に対しても謙虚なところなんだ。あれだけ偉くなっても偉ぶることがない」。最初は、首相をも動かすといわれる渡辺氏の影響力に対する畏怖かと思ったのだが、それは違った。後日、複数の若手・中堅議員からも「ナベツネさんって、私のような者に対しても『今日は色々と教えて下さい』『宜しくお願いします』と頭を下げるんですよ。あれだけの人に格下の自分がお願いされるとは思いもしなかったです」と聞いたからだ。
記者として「じゃあ、どうすれば良いの?」に答える提言
筆者は「人間・ナベツネ」に興味を持ち、渡辺氏と接触した多くの知人から「肉声」を聞いてきた。面会者の多くが口を揃えるナベツネの実像は意外にも「謙虚」の二文字が似合うものだ。「これはどういう意味なんでしょうか」「そこのところをもう一度、教えて下さい」。すでに主筆という立場にあっても面会者に対して少しも偉ぶらない姿勢に驚いたことを思い出す。財務省をはじめとする省庁幹部は読売本社に「ご説明」に伺うこともあるが、その姿勢は官僚に対しても同様で「ここの部分をもう少し教えてもらえませんか」などと1つ1つ質問し、財務次官経験者を「ナベツネの『知』に対する追求心はすごい。人たらしの名人でもある」とうならせた。 あくまでも「生涯一記者」というプライドを持ち、主筆であり続けた渡辺氏には批判もある。福田康夫政権時代の「大連立」騒動や安倍晋三元首相をはじめとする歴代首相との親密な関係などは「記者としての則を超えている」といった類いのものだ。もちろん、一介の記者が紙面を通じて世に知らせる「記す者」ではなく、単に政財界を浮遊する「話者」に終わることは避けるべきと言える。ただ、渡辺氏は憲法改正試案や行財政改革、社会保障改革などの提言活動にも重きを置いてきた。戦後政治の表も裏も知り尽くした上で、新聞記者として「じゃあ、どうすれば良いの?」に答える提言を出し続けた存在は、他に現われることはないだろう。
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