過労で意識を失い、リハーサルでは右膝を捻挫し病院へ…「昭和の歌姫」中森明菜の「紅白」
2部制になった「紅白」、その裏番組での「金屏風の復帰会見」
平成元(1989)年4月発売の『LIAR』で「オリコン」1位は復活したが、7月11日、交際していた近藤真彦が住むマンションにて自殺未遂。芸能活動を休止することになったのである。新しい元号になったことや、美空ひばりが亡くなったことなどから「紅白終了」と言われていたのがこの年である。 結局は「紅白終了」はなかったが、それまで9時からスタートだった「紅白」がこの年から2部制になり、1部を「昭和の紅白」と銘打って、亡くなったひばりのVTRや親友・雪村いづみが歌う『愛燦燦』、引退していた都はるみ、解散していたザ・タイガース、ピンク・レディーなどの復活が企画され、9時からは「平成の紅白」としていつもどおりの、その年のヒット曲を中心とした「紅白」になった。 メンバー発表前になると、「休業中の明菜“紅白”で復帰」などと噂されたものの、最終的にはマッチとともに明菜の名はなかった。 ところが明菜は「紅白」の裏番組のテレビ朝日『年越し生テレビスペシャル』で10時から復帰会見を決行。会場には金屏風が立てかけられていたにもかかわらず、「二人の間には何もなかった」と発言。瞬間視聴率19・7%を叩き出し「紅白」に打撃を与えたのだった。 そして時は流れ平成14(’02)年、明菜が「紅白」に帰ってきた。デビュー満20周年の年だった。 現在も所属するレコード会社、ユニバーサル ミュージック ジャパンに移籍し、アルバム『-ZEROalbum- 歌姫2』を発売する。山口百恵の『秋桜』、松田聖子の『瑠璃色の地球』はじめ、久保田早紀の『異邦人』や伊藤咲子の『乙女のワルツ』といった作品をカバーしたこのアルバムは、7年ぶりのトップテン入りを果たし、「紅白」では12月に発売されたベスト・アルバム『Akina Nakamori~歌姫ダブル・ディケイド』に収録されたニューバージョンの『飾りじゃないのよ涙は』を披露したのだ。「紅白」ではじめて歌う明菜の代表曲が時を超え、14年ぶりの「紅白」で華やかに艶やかに歌ったのである。 「歌姫」は明菜から安室奈美恵、そして浜崎あゆみの時代へとバトンが渡されていたが、その3人が同じ舞台に立った記念すべき「紅白」こそがこの年のことである。 そして次に「紅白」に登場したのが、平成26(’14)年、今から10年前の「紅白」だった。8月に新曲を入れた2種類のアルバムが発売され、11月にNHK『SONGS』の「~歌姫伝説~」に登場、「紅白」に12年ぶりにサプライズゲストとして登場し、新曲『Rojo -Tierra-』をアメリカのスタジオから披露、4年2ヵ月ぶりに歌手活動を再開したのだった。 そんな明菜の歌姿が待ち遠しい。昭和を駆け抜けた「歌姫」は今もあの時代を生きた人々にとって「夢」の存在そのものだし、活躍時代の姿を知らない若者たちにとっても、「伝説のスター」そのものこそ、中森明菜なのだから……。 文:合田道人 1979年、高校在学中に渡辺プロダクションから、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。その後、音楽番組の構成演出、司会、CD監修解説に加え、新聞、雑誌での執筆、作詩作曲、ラジオDJなど多方面で異才を発揮する。著書に『童謡の謎』『神社の謎』『昭和歌謡の謎』(祥伝社) 『怪物番組紅白歌合戦の真実』(幻冬舎) 『歳時記を歌った童謡の謎』(笠間書院)などがあり、1月には『歌は世につれ♪ 流行歌で振り返る 昭和100年』(笠間書院)を発売予定。司会を務める『日本歌手協会 新春12時間歌謡祭』が1月2日昼12時から24時までBSテレ東で放送される。12月には五木ひろしに提供した「こしの都」で日本作詩大賞審査員特別賞を受賞した。
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