交通事故で息子が寝たきりに――介護を続ける親の苦悩と、「親なき後」への不安
具体的には、施設側の3点の費用を補助している。 ・職員の増加にともなう人件費 ・介護リフトなど介護機器の購入費 ・医療的ケアに関する職員研修費 18年度は約1億5千万円の予算でスタートし、人件費補助は1施設で最大年1080万円だった。だが、20年度からはその上限を撤廃し、予算も倍増させている。施設側にスタッフや機器をそろえてもらい、重度障害者の入居先になってもらうのが狙いだ。
なかなか増えない「受け皿」
だが、毎年少しずつ増えているものの、昨年度に補助対象となったのは障害者支援施設が49カ所、グループホーム(以下、GH)は5カ所だった。国交省が重度後遺障害者を受け入れられる可能性があると考えている施設はそれぞれ全国に326と247あり、全体からみるとまだまだ少ない。地域によっては受け入れ可能な施設が見つかっても、「10人待ち」と言われることもあるという。
関西地方のあるGHの施設長は、「子どもを介護している親の負担を考えると受け入れてあげたいが、重度後遺障害者で気管切開をしているかたは多く、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要になる。施設側としてはやはりリスクがあります。そうしたケアができるスタッフを確保し、常時介護のために夜勤もしてもらうとなると、なかなか難しい」と話した。
シェアハウス型への支援も必要
国交省の「今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会」の委員で、関東学院大学の麦倉泰子教授(福祉社会学)は、受け皿となる施設が増えているのは評価できるとしたうえで、こう話す。 「すでに取り組まれていますが、国交省には補助制度のさらなる拡充と周知をお願いしたいと思います。いま施設にいるスタッフの研修費用の補助など、使える制度が整備されつつあり、広く最大限に活用されることを望んでいます。また最近では、従来のGHの枠にとらわれない新しいシェアハウス型の住宅も出てきています。スタッフの介護を受けながら、柔軟な生活が送れることを目指している。こうした動きを後押しするような施策も進めていただきたい」 また、受け皿ができるまで自宅で介護を続ける家族については、「負担を抱え込まずに極力、地域の人やサービスを頼ってほしいと思います。特に障害福祉サービスの関係者と緊密に連携することが大切です。ご家族でそうした地域資源を探すことが難しい場合もあると思いますが、NASVAの訪問支援サービスなどを通じて、つながっていただきたい」と話した。