ボーナス商戦「ご褒美」需要つかめ 中・小型家電や旅行… 熱帯びる静岡県内
官公庁や多くの企業で10日までに冬のボーナスが支給され、静岡県内小売事業者の歳末商戦が熱を帯びる。物価上昇が続き消費者の生活防衛意識は高いものの、最大9連休の長期休みも可能な年末年始に向けて自分や家族への「ご褒美」需要を捉え、購買意欲をかき立てる提案力の向上に各社が励んでいる。 11月末に白物家電の売り場を拡張したノジマ新静岡セノバ店(静岡市葵区)では、高騰する電気代を念頭に省エネ性能に優れた洗濯機や冷蔵庫への問い合わせが増えている。ただ、消費意欲の低下で大型家電への関心は例年より弱め。人気を集めるのはスマートウオッチやイヤホン、美髪効果などが期待できるドライヤーなど1万~3万円前後の中・小型品。川村武史店長は直近の消費傾向を「1年間頑張ってきた自分に対し、『ちょっといい値段』を選んでいる」と話し、「若手や女性のスタッフ自身の使用体験を元にした提案で共感を抱いてもらい、生活に彩りを提供していきたい」と意気込む。 本格的なランニングシーズン到来を機に、シューズの買い替えや新規購入需要を狙うのがアウトドア・スポーツ用品販売のシラトリ(同区)。メーカー各社の新商品投入に合わせ、多彩なラインアップを取りそろえる。3D計測器「フィートアクシス」で足形を測るなど、フルマラソンからジョギングまで幅広い利用層に価値のあるアドバイスを心がける。丁寧な接客により、2万円台後半の価格帯となるトップモデルの販売も増えているという。 年末年始では2019年以来、5年ぶりの9連休は国内外の観光需要喚起にも貢献している。ツアープラン数を増やすなど販売強化に着手した阪急交通社静岡支店では、京都や山陰地方などを中心に、国内プランの申し込みが前年同時期比約3倍に伸長した。川嶋信尊支店長は、国外では台湾やトルコなどへのプランが好調と話し、「11月末に短期滞在ビザ免除措置が再開された中国への旅行ニーズが、年明け以降に回復してくるのでは」と期待を込める。 ■民間支給2年連続増も 節約志向高く 静岡経済研究所は11月下旬、県内民間企業の2024年冬のボーナス支給額を、1人当たり前年2・9%増の40万8400円と予想。2年連続の増額を見込む一方で、支給は深刻な人手不足に伴う離職防止を目的とした企業努力と見立てる向きもある。厚生労働省が毎月勤労統計調査で発表した10月の実質賃金は前年同水準となり、3カ月連続のマイナスは免れたものの、同月の全国消費者物価指数は前年同月比2・3%上昇と依然高く、消費者の節約志向は強まっている。 同研究所の担当者は「景気は緩やかに回復していくだろうが、生活防衛意識の高まりから、耐久消費財の買い替えなど過度な消費回復は期待できないのでは」と分析する。
静岡新聞社