燃える新緑と輝く残雪とのコントラスト! 山肌を彩る「ゼブラ模様」を求めた月山登山、極め付きは日暈との遭遇
雪が溶けて地面が出てきた場所では、いろいろな植物が一気に芽吹いています。フレッシュな緑の葉っぱのなかに、清楚な白が美しいハクサンイチゲ、ピンク色の花びらがかわいいショウジョウバカマやコイワカガミ……。まるで夏山のようなお花畑が展開していました。 【写真】激レアの高山植物に出会う月山登山の魅力を見る(全10枚) 〝高嶺桜〟の別名もあるミネザクラもちょうど見ごろでした。 このあたりは地形的にかなり風が強いのか、多雪のせいなのか、どの樹も背丈が低く、まるでハイマツのような樹形です。気象条件の厳しさを感じさせますが、残雪の白と空の青さに、桜色の上品なピンクが映えてとても美しい。残雪期ならではのうっとりするような景観です。 緑の中にミヤマキンバイの黄色が鮮やかに点在し、夏山シーズンにはすでに綿毛になってるチングルマがいっせいに咲き始めていました。驚いたのが、シラネアオイが大群落を形成して咲き乱れていたこと。 関西人的には、わりと〝憧れのレアな高山植物〟なんですが、あっちにもこっちにも山盛り咲いている。一生分くらい見たかも……。まさかこの時期に咲いているとは思っていなかったので、とてもうれしいサプライズでした。
山頂近くで出現した神秘的な虹の輪
再びルートは雪面となり、頂上を目指してあえぎあえぎ登っていたとき、ふと前方を見ると、逆向きの虹が出ているのに気づきました。 「え?」っと思って見上げてみたら、その上にもう一重。太陽の周りに虹の輪っかができる「ハロ」現象でした。 早朝は快晴だったのですが、天気は下り坂。上空にはうっすらとした巻層雲がかかりはじめていたのです。巻層雲を構成する氷晶が太陽光を屈折させるために起きる現象で、日本語では「日暈(ひがさ)」と呼びます。 山で、ブロッケン現象が見れたらなんだかテンションが上がりますが、ハロも幸運の前兆みたいな気がしてうれしいものです。ハロが出た翌日は雨かもしれないけれど、もう下山してるもんね。
いよいよ月山神社本宮のある山頂部へ
神秘的なハロに力をもらって、だんだん傾斜を増す雪面をがんばって登り切ります。最後に長い石段をこなすと、広々とした山頂部。頂上には、大きな「月山頂上小屋」と、石垣で囲まれた「おむろ」があります。 おむろの中に鎮座しているのは、月山神社の本宮。月読命を祀る月山神社は、平安時代中期に編纂された『延喜式神名帳』にも書かれている由緒ある神社です。水を司る農業神として、また、航海漁業の神としても敬われてきたお社で、修験道の聖地としての歴史もあります。 山頂から鳥海山のクールな姿を遠望しながら、「今度はあれも登りたいよね」と。だいたい、一つの山に登頂すると、次に行きたいところがまた出てきてしまいます。 今回は天候にも恵まれ、想定外のお花やハロにも出会えて大満足の山旅となりました。もちろん、お目当てだった「ゼブラ模様」もバッチリ。 さぁ、次はどこの山へ行きましょうか。帰り道では、心地よい疲労感に包まれながら、次の山を夢想するのが山好きさんたちの〝お約束〟です。
根岸真理