強烈な個性が溢れるホンダ「ドリームCS71」 スポーツ時代の花形登場!
もうひとつの特徴は、ロングシートです。2人乗りでのツーリングに便利なことは間違いありませんが、スポーツモデルなので高速時の前傾姿勢にも有効とされています。さらに両足をシートまで上げて、全身を伸ばして腹這いになって乗る「フライング」と呼ばれるフォームが容易にできる、と言われていました。フライング姿勢が本当に最高速を伸ばすかどうかは疑問ですが、当時のバイク事情を窺わせる興味深い話です。 車体は鋼板を使用したプレスバックボーンフレームで、足まわりも「ドリームC70」と概ね同じ。ベースになった排気量250ccクラスの並列2気筒SOHCエンジンは、「ドリームC70」の17.7PS/7400rpmに対して、スポーツモデルの「ドリームCS71」は19.7PS/8400rpmへと強化されています。 公道を走るスポーツバイクには実用的な速さだけでなく、伝統的だったり革新的に見える視覚的な魅力が必要なことは、昔も現在も変わらないことを、「ドリームCS71」がそのスタイルで教えてくれます。 まだバリエーションモデルという考え方が一般的ではない中で、よりファンの要望に近いモデルや新しい遊びと用途を提案するホンダのバイク作りが集約されているモデルです。
「ドリームCS71」と同時に、排気量300ccの兄弟車「ドリームCS76」も発売され、その後「CS」モデルは排気量を拡充してシリーズ化されました。 ホンダのモデル名が「CB」へと再編されていく中で、「ドリームCS71」にマイナーチェンジはありましたが、直接的な後継機種はありません。 ホンダ「ドリームCS71」(1958年型)の当時の販売価格は18万2000円です。 ■ホンダ「DREAM CS71」(1958年型)主要諸元 エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC 総排気量:247cc 最高出力:19.7PS/8400rpm 車両重量:158kg(乾燥) フレーム形式:鋼板プレスバックボーン 【取材協力】 ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内) ※2023年12月以前に撮影
柴田直行