今が最も面白い? 将棋の「電王戦」15日から開幕
今回は「人間」が勝利か
将棋やチェスなど一対一で対決するボードゲームの世界は、最善手を続ければどちらが勝つまたは引き分けになるという結論が理論上出せるとされるため、人工知能研究の一環としてソフト開発が進んでいます。すでにオセロやチェスの世界では世界チャンピオンでもコンピューターに勝てなくなっています。しかし、コンピューター将棋は約40年前から開発が始まりましたが、ほとんど日本だけで普及している上、取った相手の駒を自分の味方の駒として使えるというルールなどからコンピューターの苦手分野とみられていました。 だが、2006年に「世界コンピュータ将棋選手権」で優勝した「ボナンザ」の設計図が公開されると開発速度が一気に加速します。ボナンザは「機械学習」と呼ばれる手法を導入。過去の大量の棋譜から自動的に学び、その局面において形勢の良し悪しを評価する手法をとっており、大きな読みミスがかなり少なくなったことが強さにつながっています。また、いわゆる「詰み」を発見するのはコンピューターの得意な情報処理能力の分野であり、すでに人間を上回っているといえます。逆に定跡を大きく離れたり、プロの実戦棋譜の少ない「入玉」の将棋などはコンピューターが不得意ではないかとみられています。 奨励会在籍経験もある強豪の古作氏は「コンピューターは疲れない上、よい意味で怖がらない。人間側はターミネーターと戦っている気分になるのではないか。プロ側がコンピューターの欠陥をつくような戦いをしなければ今回も楽観できない」とみています。
勝ち負けではなく共存の方向性を
人工知能研究の世界ではコンピューターの進化はさらに加速し、2045年ごろには人工知能が人類の知能を超えてしまうと予測する「2045年問題」という議論も出ています。伊藤氏と古作氏も将来、コンビューターがプロ棋士より強くなるという予想は共通しています。 伊藤氏は「そもそも、人間とコンピューターとの対戦は異種格闘技であり、同じ土俵で戦う事自体が困難。まずは、人工知能研究技術の粋を集めたものと人間との対戦を行って、現時点の技術がどのレベルにあるのかを冷静に測ることが研究者としては興味のあるところ。そもそも、人工知能は人間と敵対するための技術ではなく、超えた先には、さらなる高みを目指すコンピューターの利用や、人に優しい(対戦して楽しい)人工知能技術が求められるはず。オセロ界のようにコンピューターから定跡を学ぶという方向性は、将棋界の将来の形の指針になると思う」として、棋士とコンピューターが共存していく必要性を指摘しています。 また古作氏は「(人間対コンピューターの対戦は)今が最もおもしろい時期でしょう」とした上で、「人間は間違うから面白いのであり、逆転があるから味がある。怖さというプレッシャーを乗り越えた人間の棋譜こそが作品になるのではないか」と話しています。 第四回以降の電王戦について日本将棋連盟は「第三回終了後、どうするかドワンゴさんと話し合っていきたい」としています。