不快臭に困った…在宅介護の「ニオイ問題」を解決する方法は?【介護の不安は解消できる】
【介護の不安は解消できる】 在宅介護をされている方に多い悩みのひとつに「ニオイ」の問題があります。認知機能の低下でトイレの失敗が増えると衣類や寝具に尿が染み込み「尿臭」を発します。また、入浴頻度の減少は「体臭」を強める原因になりやすく、さまざまな臭いが混ざり合うと、部屋全体にモワッとした独特な不快臭が漂うのです。 突然母が別人になった(4)真夏なのに「春」と答え、ここがどこかもわからない ただ、臭いの許容範囲は人によって異なり、特に独居されている認知症の方はご自身の尿臭や体臭を自覚しづらい。デリケートな話題として扱われるニオイ問題でご家族が悩んでいても、本人に伝えるのをためらわれるケースも少なくありません。 在宅介護における対策として、まずは臭いを発する原因に対して“先手を打つ”必要があります。本人が尿意を認識しているけれど、失禁を繰り返すのであれば、居室はできるだけトイレに近い部屋を選び、トイレまでの動線に手すりを設置するなど、トイレにアクセスしやすい環境づくりを行うといいでしょう。尿意が認識できない方に対しては、寝起きや食後など、介護者が時間を決めてトイレに誘導するのもおすすめです。それでも失禁が避けられない場合には、リハビリパンツの着用を検討するといいでしょう。一般的な紙おむつと違い、リハビリパンツは薄手のショーツ型なので下着感覚ではけるだけでなく、万が一汚れても簡単に着脱できます。 本人の入浴拒否が強く入浴介助が難しい場合には、入浴サービスを行うデイサービスやショートステイ、訪問介護を積極的に利用し、ご家族だけでは解決できない問題は介護のプロに一任するのもひとつの手です。 ほかにも、臭いがこもらないよう日頃から部屋の換気を心がけ、脱臭効果のある空気清浄機や消臭剤を取り入れるといいでしょう。尿臭が染みつきやすい布団やベッドなどのリネン類は、あらかじめ抗菌・防臭効果が高いものを選んでおくのもおすすめです。また、本人の好む香りのする自然な芳香剤や花を飾るなども効果的です。 近年は、尿臭や体臭に特化した洗剤の開発が進んでいます。一般的な洗剤では取り除き切れない染みついた頑固な尿臭や体臭を取り除いてくれるタイプも販売されています。 自宅で洗濯するのが難しい方であれば、行政が行っている「寝具丸洗いサービス」を利用するのもいいでしょう。寝たきりや認知症で失禁が多い方を対象に、寝具を丸洗いしてくれるサービスで、全国の市区町村で導入されています。利用にあたり市区町村によって条件が異なるため、希望される際はお近くの地域包括支援センターに問い合わせてください。 ▽奥田亜由子(おくだ・あゆこ) 日本福祉大学社会福祉学部卒業後、知的障害者の入所施設の生活指導員として経験を積んだ後、社会福祉士資格を取得し、在宅介護支援センターのソーシャルワーカーとして勤務。介護保険制度開始と同時に介護支援専門員資格を取得。日本ケアマネジメント学会理事、学会認定ケアマネジャー。現在は金城学院大学人間科学部コミュニティ福祉学科で非常勤講師も務める。