中前へサヨナラ打を放つ育徳館の4番隅田

　◆九州地区高校野球1回戦　育徳館2×―1日南学田（26日、佐伯中央病院スタジアム） ■秋季九州大会組み合わせはこちらから 　創部126年目の育徳館（福岡）がまた新たな歴史をつくった。甲子園常連の日南学園をサヨナラで破り初出場の九州大会で初勝利を挙げて準々決勝へ進出。1失点で完投したエース島汰唯也（だいや、2年）は「めっちゃうれしいです！」と白い歯を見せた。 　決めたのは主将で4番の隅田勇輝（2年）だった。1―1で迎えた9回裏1死一、二塁。変化球を中前にはじき返し、二塁走者がサヨナラのホームを踏んだ。3回は満塁、5回、7回も得点圏に走者を置いた場面で4番打者はことごとく凡打に倒れた。最後に回ってきたチャンスで4番の役目を果たした。「次の打者の島に回して1点を取ろうと思った」。それまでの打席は変化球に合わず無安打。「少しバットを寝かせて構えて、低い打球をミートして転がそうと思った」と執念に一打で勝利を決めた。 　強豪との対戦は6回まで0―0の投手戦となった。島が4回と6回以外はすべて走者を背負いながらも粘り強く無失点でしのぐと、マウンドで奮闘するエースをバックも持ち味の堅い守備で援護。7回には1死三塁で右飛を捕った右翼の山下恩生（2年）がレーザービームでタッチアップからの生還を阻止。「ああいう場面でカットを入れずダイレクトでホームに送球する練習はしてきたので練習通りにできた」と井生広大監督は山下のファインプレーにうなずく。1点リードして勝利目前の9回2死からエースが同点本塁打を許しても「想定通り。リードを守ったまま最後まで行けるなんて思っていなかったので」と井生監督もベンチも笑顔が消えることはなかった。 　この日は応援を希望する一般生徒約100人がスタンドに駆けつけ声援を送った。初の九州大会出場でOBや周囲は盛り上がっていたが、周囲のフィーバーをよそに選手たちは冷静だった。「今から急に成長することはないので、いつも通りの練習をしていました」と島は九州大会へ向けても通常通り。隅田は「九州大会に出るチームは自分たちより強いところばかりなので、挑戦者の気持ちで立ち向かおう」とチームメートに話し、福岡大会と同じ気持ちで大舞台に臨んだ。 　準々決勝は地元の柳ケ浦（大分）との対戦が決定。チームのスタート時に決めたモットーは「楽しむ」。選抜大会出場の目安となる4強入りを懸けた真剣勝負も、みんなで楽しんで初の大きな壁を突破してみせる。（前田泰子）