一時的にシフトが増え、今年のパート収入が130万円を超えそう。扶養内のままでいられる?
パートで働く主婦にとって、年収の壁は気になるものです。「扶養内」を維持するために、年末近くになると収入を調整する方が増える一方で、繁忙期に貴重な働き手不足に苦慮する経営者が多いのも現実です。 働く側にとっての税負担と社会保険適用の概要とともに、こうした背景をもとに始まった国の対応策「年収の壁・支援強化パッケージ」について紹介します。
「年収の壁」とは。税金と社会保険では基準が異なる
さまざまな働き方があるなかで、配偶者の扶養範囲内で働くという選択肢があります。ここでは会社員の夫が扶養者(扶養する人)、パートで働く妻を被扶養者(扶養される人)と想定して記述しています。 妻は、被扶養者となることで健康保険や厚生年金保険料などの社会保険料が免除され、扶養する夫は、配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)の所得控除適用により所得税や住民税の税負担が軽減されます。 扶養範囲内で妻が働くことで、少しでも家計収入がアップすれば余裕ができますし、とくに子育てなど時間に制限ある世代では、メリットの多い働き方と言えるでしょう。それだけに、働いても税や社会保険料の負担によってむしろ手取り収入が減少してしまうことは避けたいものです。 ◆税金面と社会保険、それぞれの「年収の壁」 一般的に「年収の壁」と呼ばれ、働き方をコントロールする基準となるのが、税金面の「103万円」と社会保険での「106万円」や「130万円」です。まずは、税金面と社会保険は基準が異なることを理解しておく必要があります。 ちなみに、住民税については、基礎控除の金額が所得税と異なる点、税額控除が適用されるため、年収の壁は「100万円」となります。 ◆パートタイム(短時間労働者)の社会保険への加入条件 また、それぞれの相違点として、税金面では、その年が終了した時点での収入金額をもとに課税されるのに対し、社会保険は、雇用契約の時点で加入の可否を判定します。パートなど短時間労働者は、以下の5つの項目すべてに該当する場合、社会保険への加入が義務付けられます。 (1)1週間の所定労働時間が20時間以上 (2)2ヶ月を超える雇用の見込みがある(フルタイムと同様) (3)月額の賃金が8.8万円を超える (4)学生ではない(夜間学生、通信制は除く) (5)従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している ※2024年10月以降は51人以上の企業に範囲拡大 上記(3)の月額賃金を年単位で計算すると、105万6000円(8万8000円×12)となり、これが「106万円の壁」の根拠です。 これまでは、月額賃金10万8000円(年額129万6000円)が基準であったため、「130万円の壁」が一般的でしたが、法改正とともに、適用される事業所の規模が順次拡大しており、勤務先により基準が異なるのが現状です。 なお、2024年10月以降もこれまで通り、年額130万円を超える働き方の場合には、小規模事業者を含め事業規模に関わらず社会保険への加入義務があることに変わりありません。つまり「130万円の壁」がなくなる訳ではありません。 ◆例えば、1年間の収入が105万円であった場合 仮に、1月1日から12月31日まで1年間の収入が105万円であった場合、基礎控除のほかに生命保険料控除など他の所得控除が適用されなければ、非課税限度額を超えた2万円に対して所得税を納付することになりますが、いずれの事業規模であっても、社会保険はそのまま扶養内で継続します。