モデルは軍服?消えゆく「学ラン・セーラー服」 制服廃止運動も起きた戦後までを振り返る
◆制服の素材も変化! 高級・安価で丈夫を経てエコ素材へ
制服における変化は、その意味だけではありません。素材もかなり変わっています。 たとえば、制服が特権的なものであったころの素材は高価な毛織物で、学生たちは注文服として各自仕立てていました。 また中高生の制服ではありませんが、大正時代の終わり頃には、安価な木綿の制服が大量生産できるようになり、小学校の男子児童に着用されています。 戦時中に、輸入が難しくなった綿や羊毛の代用品として使われたのが、パルプを原料とする繊維であるスフ(ステープル・ファイバー)。 けれどもスフは、耐久性がなく、生徒にもその家族にも大変不評だったようです。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でも、「貧相な化学繊維」と酷評されていました。 戦後は、経済成長とともに開発が進んだ化学繊維を使った、丈夫な制服が大量生産できるようになりました。 政府の繊維産業推進政策の一環として、制服の生産拡大に力が入れられ、学校が制服を導入しやすい状況になったことへの指摘もあります(*)。 そして現在、多くのメーカーでサスティナブルな取り組みが行われています。たとえば、トンボの制服は、原油使用料が抑えられているのですが、これは、主にペットボトルを原料とした再生ポリエステルを使用しているためだそうです。 また大手素材メーカー・日本毛織(通称ニッケ)と駒場学園高等学校は、「循環型制服プロジェクト」を行っています。卒業生から譲り受けたウール混の制服を繊維の状態まで戻し、その繊維から生地を製織、新たな制服に再生させます。 生徒たちが主体となってこのプロジェクトに関わることで、衣類の大量生産・大量消費に伴う環境負担の問題解決に、自分たちも貢献できることを実感するという狙いもあるそうです。 このように制服は、その時々の教育観を始めとするものの考え方、社会情勢、技術や産業など、多くの事象が反映され、変化してきました。 <参考> *:馬場まみ「戦後日本における学校制服の普及過程とその役割」『日本家政学会誌』Vol.60 No.8、2009
高橋 真生(子育て・教育ガイド)