阪神・原口と西武・森は名捕手不在の時代に終止符を打てるのか
名捕手不在の時代が終わらない。 ひとつの目安であるベストナインを見てみると、今季のセ、パの受賞は、優勝した広島のベテラン、石原康幸(37)とロッテの田村龍弘(22)が、それぞれ初受賞した。石原は巧みなリードでチームを牽引したが、打撃面では、打率・202、17打点、0本、12犠打という寂しい数字。日本一となった日ハムの大野奨大(29)を押しのけて選ばれた田村は、6月に大ブレイク。22試合に出場し、打率・400、猛打賞を4回マークして、パの捕手としては、2004年のダイエー時代の城島健司以来12年ぶりの月間MVPを獲得、そのインパクトが強かったのだろう。日ハムの“日本一捕手”大野との数字を比べると、田村が打率・256、38打点、2本、得点圏打率・241、大野が打率・245、35打点、5本、得点圏打率は・290と、そう変わらなかったのだが、大野は、ゴールデングラブ賞の受賞のみに終わっている。 現役でベストナインの複数回受賞捕手は、セでは、巨人の阿部慎之助が、2007年からの8年連続を含めて9度受賞しているが、今季は怪我に悩まされ高橋由監督の「捕手・阿部復帰計画」は崩れ、来季は一塁起用が、規定路線。パでは、楽天の嶋基宏が2度受賞しているが、今季は故障で長期離脱を余儀なくされ、同じく西武、ソフトバンクで2度受賞していた細川亨もマスクをかぶった試合数は、49試合に止まり、今オフ、ソフトバンクを戦力外となって楽天へ移籍した。 名捕手不在の時代はいつ終わるのか。ブレイクする可能性のある捕手は誰なのか。 ベストナインを2度受賞している元千葉ロッテの里崎智也氏は、こんな意見を持つ。 「名捕手と呼ばれるためには、打てる捕手でなければなりません。過去に記録も、記憶も残されてきた野村さんや、古田さん、谷繁さんらも、打線の中でクリーンナップを任される捕手でした。つまり名捕手誕生の条件は打撃力ということになります。守りに関しては、指導力、経験、理論のあるコーチが教えて経験を積めば、ある程度のレベルまでは成長できます。問題は打撃です。そう考えると、可能性を持っているのは、実際にクリーンナップを任された西武の森、阪神の原口の2人ということになりますね」 別表を見てもらえばわかるが、今季の捕手の打撃成績は、セでは、育成から支配下登録された阪神の原口文仁(24)、パでは、西武の森友哉(21)の数字が抜けている。里崎理論にあてはめれば、名捕手になりえる可能性が高いのは、高い打撃センスを持った、この2人の若手が最有力いうことになる。 先日、契約更改を行った森は、「来年は捕手一本で勝負したい」と宣言した。辻新監督も、森を捕手起用する方針を固めている。では、今季22試合しか先発マスクをかぶることができなかった森が、プロ4年目となる来季に捕手として成長、成功を収めることはできるのだろうか。高卒4年目にしての本格挑戦では、もう遅くはないか。