火山活動続く「箱根山」 富士山噴火との関連はあるの?
活発な火山活動が続く箱根山(神奈川・静岡県境)。21日には気象庁が震動などを観測する「空振計」を増設するなど、警戒を強めています。各地で活発化する火山が増える中、箱根山は、300年間噴火していない富士山と近いこともあり、関連を心配する声もあります。地震学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授が、箱根山の今後と富士山との関連性について解説します。 【図】箱根火山の防災マップ、どんな災害が想定されている?
火山ごとに異なる「前兆」
5月6日、気象庁は箱根の噴火警戒レベルを1から2に上げました。これによって、火口まで行けたレベル1から、山頂(大涌谷=おおわくだに)付近には行けなくなったレベル2になりました。その後も火山性地震は活発で、付近に展開されている地震計網では4月後半以降、4000回を超えるほどの浅い火山性地震が活発に起き続け、大涌谷の噴気も増え、山体膨張も観測されています。これらの現象は、いずれもマグマが浅いところに上がってきていることを示しているものです。 しかし、箱根が噴火するかどうかは、学問的には未知数なのです。その最大の理由は、かつての箱根の噴火を日本人が見て、記録していたことがないからです。 火山はそれぞれに性質が大いに違います。一つの火山で噴火の前に出た前兆は、他の火山では噴火の前兆にはならない例が多いのです。 2014年9月に噴火して60人以上の死者行方不明者を生んでしまった御嶽山も、2007年に起きたずっと小さい噴火のときには2週間前から火山性微動が出ていました。火山性微動はマグマが活発に動いている指標だと思われています。 しかしもっと大きな噴火になってしまった2014年のときには、噴火のわずか11分前まで火山性微動は出ませんでした。つまり、一つの火山でも噴火ごとに「前兆」が違うこともあるのです。 箱根はかつて大噴火したことがたびたびある火山です。たとえば6~9万年前の噴火のときは火砕流が出て、50キロも離れた横浜まで達したことが地質学的な調査から分かっています。火砕流は新幹線並みの速さで温度も300度もあります。20世紀初頭にはカリブ海の島で3万人の町が全滅したこともあります。 また箱根の大噴火で3200年前には、それまで3000メートル級の高さがあったと思われていた箱根火山の上半分が吹き飛ばされて、いまの1400メートルの高さになりました。それだけではなく、そのときの噴火から出た火砕流がカルデラを埋めて芦ノ湖を作り、仙石原を埋めて平らにし、さらに西側の外輪山である長尾峠を越えて静岡県側まで流れ出しました。 しかし前に書いたように、これらの大噴火の前にどんな前兆があったのかは、まったく記録されていないのです。 それゆえ、今後、箱根がどういう「前兆」がどこまであったときに噴火するか、という「閾(しきい)値」が分かっていないのです。