「マツパク厩舎ってだけで買えたんだ」 難解レースのヒントは厩舎成績? 阪神JFで気付いた2つの現象
2011年、1戦1勝で阪神JFを勝ったジョワドヴィーヴルに受けた衝撃
芝とダートの“チャンピオン決定戦”が終わり、中央競馬は今週から2週にわたって2歳の若駒によるG1レースが行われる。今週は牝馬No.1を決めるG1阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)が8日、京都競馬場の芝1600メートルを舞台に行われる。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏は、不確定要素が多い難解レースを見続けた中で気づいた「必然」に注目。牝馬のレースならでは、の傾向にも触れた。 【動画】2011年、1戦1勝で阪神JFを勝ったジョワドヴィーヴルの実際のレース映像 ◇ ◇ ◇ 私は調教の内容を予想の基本にしているが、時として、もっと大きな「くくり」で予想することがある。それが「厩舎別の条件成績」。馬に調教を課しているのは調教師であり、調教助手などの厩舎スタッフ。それならば、厩舎の特色が出て、活躍する舞台に何らかの偏りが出ても不思議ではないだろうという考え方だ。 今秋、天皇賞・秋とジャパンカップを勝ったドウデュースを管理する友道康夫厩舎。2021年以降、今年の12月1日までのJRAでのレースにおいて、芝1200メートルでは46回の出走で6勝だったのに対して、芝2400メートルでは65回の出走で13勝。単勝率は13%と20%と大きな差がある。この中間の距離に関してはどうかというと、1200メートルから2400メートルへ距離が延びるにつれて単勝率が上がっていく。 今年3月、高松宮記念に管理馬のディヴィーナが出走した時「芝1200メートルのG1に出走するのって初めてじゃないかな」と苦笑いしていた友道調教師。確かに調べてみると、2002年の開業から初めてのことだった。友道調教師が調教助手時代、ともに仕事した角居勝彦元調教師も「あまり1200メートルを使うのは好きじゃないんです。その距離を使ってしまうと、そこから距離を延ばすことが難しくなってしまうので」と取材時に聞いた時の記憶が蘇った。 こちらも芝1200メートルのG1へ出走したことがあるか調べてみると、なんと0回。G1に関してはウオッカのダービーをはじめ、数々の名馬を管理。芝3000メートルの菊花賞はデルタブルース、エピファネイア、キセキで3勝した実績とあの時の言葉が厩舎のスタイルを示したといってよいだろう。 2人が一緒に仕事をしたのは、松田国英厩舎。こちらも芝1200メートルのG1への出走を調べてみると、ブロードアピールやフサイチリシャールなどが6回出走していたが、勝ったことはない。マツクニ厩舎もタニノギムレット、キングカメハメハがダービーを制覇。つまり、3人ともスプリントG1は勝っておらず、ダービーは複数回勝っている。 ここまで詳しく書かなくても、なんとなく友道厩舎は「クラシックディスタンスに強い」ということは皆が分かっていることで、だからこそ生産者も馬主もそこに適性が高そうな馬を友道厩舎へ預託する。調教師もセリや牧場で長距離向きの馬に注目する。厩舎の距離成績に偏りが出ることは偶然ではなく、必然だというわけだ。