「潰瘍性大腸炎」の治療でステロイドが不要に!? 先端治療の有効性に期待高まる
潰瘍性大腸炎とは?
編集部: 今回の研究対象になった潰瘍性大腸炎について、どのような病気なのか教えてください。 甲斐沼先生 潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患で、厚生労働省による指定難病の1つです。特徴的な症状としては、血便を伴う(伴わないこともあります)下痢と、頻発する腹痛です。 病変は最大で直腸から結腸全体に拡がります。日本国内の潰瘍性大腸炎の患者数は、2013年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計によると16万6060人で、人口10万人あたり100人程度です。 発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳ですが、若者から高齢者まで発症する疾患です。潰瘍性大腸炎は虫垂を切除をした人は発症リスクが低いことや、喫煙をする人はしない人と比べて発病しにくいことが報告されています。
今回の発表内容への受け止めは?
編集部: 関西医科大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 甲斐沼先生 現在の治療ガイドラインでは、入院を要する潰瘍性大腸炎患者に対して、過去のステロイド使用状況に関する言及がなく、ステロイドを第一選択肢として推奨をしています。 中等症および重症潰瘍性大腸炎に対する基本的治療法は、現在でもステロイドが主流ですが、以前よりステロイド薬使用に伴う精神症状・耐糖能異常・消化性潰瘍などの副作用の発症が懸念されてきました。 今回の研究成果により、入院する重症潰瘍性大腸炎患者に対して第一選択療法であるステロイドを回避して生物学的製剤・低分子化合薬を使用する治療法が、有効的な治療戦略の1つになり得ることを明らかにしました。 急性重症潰瘍性大腸炎の治療方針を検討する上で多くの示唆に富む内容であり、今後の治療ガイドライン改訂や臨床現場での治療指針決定などの場面に寄与する社会的に意義を持つ研究であると考えられます。
まとめ
関西医科大学らの研究グループは、入院が必要な急性重症潰瘍性大腸炎患者の治療について、生物学的製剤などを用いた先端治療の有効性を検討した結果、先端治療の有効性がステロイドと同等だったと発表しました。 ステロイド治療は、精神症状、耐糖能異常、消化管潰瘍などの副作用の報告があるほか、ステロイド治療抵抗例や依存例も存在するため、新たな治療戦略の確立が待望されていました。今回の発表は注目を集めそうです。