モノ言う株主・丸木氏「社外取締役は飾りじゃない」 「求められる役割」を日本企業の経営陣は知っているのか
もし親会社が子会社を100%買収しようとしたとき、親会社の株主としてはできるだけ安く買ってほしいし、子会社の株主としてはできるだけ高く売りたいわけです。 その場合、この子会社の社外取締役はどちらの味方をするのか。 実は我々は子会社に投資していたので、当人に直接お尋ねしたことがあります。答えは曖昧模糊なものでした。 「私がそのとき、適切と思うように行動します」 これでは、社外取締役としての役割を果たすことは期待できません。あくまでも子会社の一般株主の利益を最大化すべき立場なのです。それ以外の利益を代表しないよう、ここはルールの改正が必要でしょう。
また同じく我々の投資先企業で、取引先の元副社長が社外取締役に就いていたところもありました。この取締役の立場も利益相反になりやすいでしょう。 そこで我々は、当人にこうお尋ねしたことがあります。 「もし取締役会でその取引先との契約について議論になったとき、あなたはどちらの利益を優先しますか?」 「そういうときは議決を棄権します」 一見すると正しい判断のようにも思えますが、やはり社外取締役としてはおかしい。一般株主の利益を代表して意見を述べ、行動する人でなければならないはずです。
このような重要な案件においてこそ、常勤取締役から独立した立場で是非を判断するのが本来の役割です。棄権されては社外取締役の意味がありません。 我々がよく知っている事例は投資先企業などに限られますが、同じような社外取締役は日本の上場企業に少なからずおられる気がします。官庁から天下っている例も多いし、旧財閥系では同じグループ企業から恒常的に送り込まれている例もあります。このようなケースでは、指名委員会もかぎりなく形骸化しているのではないかと懸念しています。
こういう慣習を看過すべきではありません。 社外取締役の立場や役割を再確認し、東証の「独立性基準」を社外取締役にふさわしい属性に改める必要があると思います。それが一般株主の意向を経営陣に届ける強力な手段であり、ひいては経営に常に緊張をもたらすことにもなるはずです。 ■社外取締役に期待される2つの役割 ではふだん、社外取締役にはどのような仕事があるか、あまりよく知られていないかもしれません。 上場企業の取締役会の開催は、原則として月に1回程度です。多い会社では年18回という例がありました。その間にやるべきことは、実はさほどありません。