「もう死にたい」と口にする不登校の少女が母親に心を開いたきっかけはYouTubeだった…小学1年生からタブレット学習が始まる時代の「親の役割」
ゲームより楽しいことがあれば依存しない
とはいえ、今は小学校の授業でもタブレットが1人1台支給される時代。こうしたツールを持たせないというのは、現実的ではない。 「もちろん、ICT機器にメリットも多いのは事実です。特に情報収集という点では、活用しない手はありません。ただ、一番の懸念は、デバイスを使ったゲームなどをやめることができず、睡眠障害を引き起こしやすい点です。子どもの脳を育てるという観点で私が何よりも重視しているのは、早寝早起きと十分な睡眠時間の確保という『生活の軸』です。睡眠の大切さは世界の小児科医から利用されている教科書『ネルソン小児科学』にも記載され、理想は小学生が1日約10時間とされています。まずはこの生活の軸を守ったうえで、次に食事や入浴といった必要な時間を差し引き、余った時間に勉強でも、習い事でも、ゲームでも、好きなことをやればいい。でも、睡眠時間を削ってまで、やってしまうと、脳の発達に弊害が生じる。もし、仮に止められない状態なら、ゲーム依存の可能性も考えられます」 最近では小学校低学年でもNintendo Switchなどのゲームにハマる子どもが多い。成田氏の話によると、「ゲームに依存しているように見える子どもは、ゲームに没頭する以外に不安を解消する手立てがないから、依存してしまう」のだと言う。 「つまり、ゲームにのめり込む以上に、安心できる環境や楽しいことがあれば、そこまで執着はしない。だからこそ、親は家庭の中に『安心』を与えてあげることが大事なのです」
敵視ではなく一緒に楽しむ
親が仕事をしたり、家事をしたいがために、ゲームやスマホのYouTubeに子守りをさせている親も見受けられる。他方、「これらを絶対にやらせない」とICT機器を持たせない親もいる。 「確かにこれらのツールを手にすると、子どもがゲームやYouTubeの沼にハマってしまうリスクがないとは言い切れません。でも、うまく使えば、親子のコミュニケーションにも有効です」 成田氏によると、過去にこんなケースがあった。 かつて、友人関係が上手くいかず、不登校になってしまった中学生の女の子がいた。両親から相談を受けたときは「もう死にたい」そんな言葉を発していたという。ところが、しばらくして、その女の子はYouTubeで自身の“推し”を見つけたらしい。そこでお母さんは、YouTubeを観ることを否定せず、「何なに? この人のどういうところが面白いの? お母さんに教えて!」と興味を示し、一緒に観てみることにした。すると、お母さんもどっぷりハマり、親子で楽しんで観るように。そして、自然と親子の会話が増え、話題も広がった。今では、推しのイベントに意気揚々と出かけられるまで元気を取り戻した――。 「このように、親子のコミュニケーションツールとして活用するのは、とてもいいことだと思います。子育てで最も大切なことは、早寝早起きと十分な睡眠、すなわち『生活の軸』。そして、親子のコミュニケーションです。そこが分かっていれば、外で習わせるようなものは、ごく一部に限られ、塾や習い事で忙しい毎日にはならないはずです。『わが子のために良かれ』と目先の良さそうなものに飛びつく前に、日々の生活を整え、子どもにたくさんの言葉を渡し、安心させる。それが親の大事な役割なのではないでしょうか。そこが理解できていないと、コミュニケーション能力の問題から子どもの不登校を招くなどの事態が起きてしまうのです」 前編「子どもの英語習得のために『早期のバイリンガル教育』より大事な“感情”とは 専門家が指摘する『子どもの将来のため』に潜むリスク」では親がハマりがちな早期英語教育の落とし穴について、成田氏が語る。 取材・文 石渡真由美(ライター) デイリー新潮編集部
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