東京五輪メダル候補の世界リレーでなぜ痛恨のバトンミス失格が起きたのか?
近年の日本代表は、1走・山縣、2走・飯塚、3走・桐生、4走・ケンブリッジというのが、基本ライン。メンバー変更はあったものの、この4人が他の走順に入ることはなかった。オーダーが固まれば、バトンパスの精度も自然と上がってくる。しかし、今回の世界リレーでは急性虫垂炎の影響で本調子ではなかった飯塚翔太(ミズノ)と左太もも痛のケンブリッジ飛鳥(ナイキ)を外して、1走の山縣を2走に、3走の桐生を代表初アンカーに区間変更。アジア大会200mで金メダルを獲得した小池が初めてメンバー入りして3走を担った。 リオ五輪以降、1走・山縣のスタートダッシュ、3走・桐生のコーナーワークが日本のアドバンテージとなっていたが、土江寛裕五輪強化コーチは「山縣はスピードの持続力があり、桐生は直線の爆発的なスピードが武器。本来の持ち味を出せる順番だと思う。東京五輪に向けて、戦い方のバリエーションを増やしたいという狙いもあります」と今回のオーダーについて語っている。しかし、今回は走順を変更した山縣と桐生のところでバトンミスが起きたことになる。 桐生は「改めてバトンパスの難しさを感じた。失敗しないだろうという緩みがあったのかもしれない」と話しており、リーダー的存在だった飯塚の不在が影響した部分もあるだろう。 東京五輪に向けて、選手たちの走力アップはもちろん、バトンパスのスキルも磨かないといけない。しかし、その両方を上げていくのは難易度が高い。というのも、男子短距離のレベルが上がったことで、誰がリレーメンバーに入るのか予測するのが難しいからだ。 今回の世界リレーを走った4人に加えて、飯塚とケンブリッジがいて、さらにサニブラウン・ハキーム(フロリダ大)というエース候補がいる。ロンドン世界選手権の男子200mで最年少ファイナリストになったサニブラウンはすでにドーハ世界選手権男子100mの参加標準記録(10秒10)を突破。東京五輪では男子4×100mリレーの中心選手になる可能性が高い。そうなると走順が再び、シャッフルされることになるだろう。 バトンパスの相性を含め、どんなオーダーを組むのがベストなのか。そして、代表候補がそのまま東京五輪の日本代表に選ばれるのか。夢の「金メダル」獲得へ、課題はたくさんありそうだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)