「自分がいるからうまくいく」と、経営権まで奪われ…aikoが法廷で語った事務所元取締役「洗脳」の全容
「育ての親」との間にあったこと
「千葉さんとやっている時は、悪徳ブリーダー(犬や猫の繁殖家)によってゲージに閉じ込められている生活でした。今は、初めて公園に出て走り回れる。前にも増して音楽が楽しく好きになりました」 【写真】「TBSアナウンサー」が民家に侵入して放尿、警察に保護されていた! 東京地裁429号法廷で6月18日午後、証言台に立ったシンガーソングライターのaiko(48)は、公判担当の検事が最後に「被告人に対してどんな気持ちか」と問うた時、こう答えた。 千葉さんとは、aikoの「育ての親」と評されてきた千葉篤史被告(58)のこと。千葉被告は2009年2月からaikoの個人事務所であるbuddy goの役員を務めていた。その地位を利用して行っていたのが、ツアーグッズ(ツアー会場で販売するタオル、Tシャツ、バッグなど)の仕入れに介在して自分の友人の会社に仕入れを一元化し、利益の9割を自分の個人口座に振り込ませるという中抜き行為だった。 この事実を知ったaikoは、千葉被告を21年12月に警視庁に会社法違反(特別背任)容疑で刑事告訴。警視庁が23年2月、同容疑で千葉被告を逮捕し、東京地検が起訴して5月から公判が始まっていた。 映画『名探偵コナン』の主題歌としてリリースされた45枚目のシングル『相思相愛』が大ヒット中で、今も多くのファンを抱える人気アーティストと「育ての親」の間に何があったのか。東京地裁には抽選となった傍聴券を求めて多くの人が並んだ。
「自分のおかげで特別なライブができる」
遮蔽のついたてに遮られ、入出廷を含めて傍聴人にはaikoの姿が見えない。だが、声に澱みはなく吹っ切れた印象。浮かび上がったのは、aikoという宝石を見出した千葉被告が、自分だけのものしようと抱え込み、他人と極力、接触させずにaikoを洗脳、支配するという歪んだ姿だった。 ミュージシャンだった千葉被告は、「音楽関係の仕事に就きたい」と大学卒業後、大手映像・音楽ソフトメーカーのポニーキャニオンに入社する。大物プロデューサーとしてハイブランドに身を包み、高級外車を乗り回す派手な生活で知られたが、逮捕後、否認を続けていることもあって拘留生活が続いている。手錠と腰縄付きで登場した千葉被告は、黒のスーツに白のワイシャツ姿。白髪痩身でかつての勢いのあるイメージはない。 aikoへの検事の尋問は、千葉被告との出会いから始まった。出会いはデビュー前で、レコード会社のディレクターと歌手の関係で始まり、1998年7月にデビューする。最初に所属していた音楽事務所は方向性の違いから独立することになり、aikoが100%出資のbuddy社を設立する。 ポニーキャニオンの社員でありながら千葉被告は、buddy社の全業務に深く関わるようになる。 「従業員の給与やライブの製作と運営など千葉さんがすべてに関与していました」 どうして(役員でもないのに)関与するのかーー。こう問われたaikoは、「『自分(千葉被告)がライブのセットや構成を考えているから特別なライブができる。自分が携わることでうまくいく。ライブを自分が作っている』と千葉さんに言われ続け、信用していた」と述べた。ライブだけでなくツアーグッズについても、千葉被告が仕切っていたという。