「自分がいるからうまくいく」と、経営権まで奪われ…aikoが法廷で語った事務所元取締役「洗脳」の全容
経営権まで奪われていた
その状態は、buddy社の取締役を務めていた元マネージャーが退任したのを機に、千葉被告が取締役に就任して、より激しくなる。役員になるのは千葉被告が言い出したことで「aikoの名前だけがある(役員欄に載っている)のは危ない」という理屈だった。 さらにこの後、奇妙なことが発生する。buddy社の出資金300万円はaikoがすべて拠出したものだが、07年7月、60株のうちaiko29株、千葉被告31株と所有権割合が変わった。なぜなのかと検事に問われてaikoは「おぼろげですが、『全部自分(aiko)が持っていたら危ない』と(千葉被告に)言われたからです」という。経営権をも奪われていた。 いつの間にか「すべて千葉さんを通すキマリ」ができていて千葉被告があまりに忙しくしているので「新しいスタッフを入れたらどうか」と提案しても、「違う人にライブを任せたら、今のようなライブはできない。チープな安いものになる」と否定され、「優秀な人を入れるとカネだけ取って逃げられるけどいい?」と取り合わない。 aikoはその頃、諦めの境地だった。 「全部(千葉被告に)否定されるんです。逆らうと音楽製作がうまくいかない。我慢すればいいと思っていました」 千葉被告への役員報酬は当初、発生していなかったが「役員なのに何も貰わないのはおかしい」という千葉被告の申し入れにより、17年から「月額100万円」が支払われるようになった。金額を決めたのは千葉被告。09年から8年間は「タダ働き」していたことになるが、その裏で私腹を肥していた。
ライブは満席なのに「経営が厳しい」
検察側の冒頭陳述によれば、13年2月頃、大学時代の友人にツアーグッズの仕入れ過程に加わるように誘い、この知人の会社が得る利益のうち9割を千葉被告が受け取り、残り1割を知人の会社のものとする契約書を13年3月27日に結んだ。 起訴状に記されたのは、16年9月9日から19年1月28日まで26回に分けて6億4817万円を知人の会社に振り込ませ、同社が千葉被告の個人口座に16年9月12日から19年1月31日までに25回に分けて1億726万6640円を振り込んだというもの。だが、それより前から中抜きは行われていたわけで、ツアーグッズについても業者選定や価格決定権は千葉被告が握っており、aikoが口を挟める状況ではなかった。 事務所運営も不可解だった。検事は、「3回、4億6000万円を事務所に貸付けているのはなぜか」と問うた。aikoは「事務所(の経営が)が厳しい。支払いの費用が必要なんで、ちょっと貸して欲しい」と千葉被告に言われたからだと答えた。だが、「私はライブしかわからないが常に満席。グッズもよく売れたと聞いていたのに、凄く不思議だった」という。 千葉被告に裏切られたことがハッキリした今となっては、という思いはあるだろう。すべてに疑いの目が向けられる。 「『俺はポニーキャニオンの口座は見たことがない。株と競馬で儲けている』と言ってました。船を持っていると言ってたし、マンションを2つに高級車、どうしてそんなおカネがあるのか。洋服はハイブランドで、お気に入りのTシャツ以外は毎日(服が)変わる。どこに収納しているかと思っていました」