クリスマス前のテロに政府も当惑、政治も経済もボロボロ…優等生だったドイツに何があったのか
■政府も今回のテロに当惑 連立政権崩壊の矢先、冒頭の通り、ドイツ東部ザクセン・アンハルト州の州都マグデブルクで悲劇が起きた。クリスマスマーケット襲撃テロは今回が始めてではないが、なぜマーケットへの車の乗り入れをできなくしていなかったのか当局への非難の声は高まっている。 国民だけでなく連邦政府も、今回のテロに当惑している。車を運転していたサウジアラビア出身で同州在住の精神科医師の男(50)は単独犯と見られ、10月まで地元当局が危険人物として連絡を取っていたことがわかっている。ではなぜ、テロ行動を察知し阻止できなかったのかというと、男はイスラム教をやめ、無神論者となり、サウジ批判を繰り返していたからだった。
通常、規模の大きなテロでは背後に組織や集団の支援があるのが普通だが、無神論者の反イスラムの男は孤立していた。SNS上に発言を繰り返していた男は、イスラム聖戦主義者でも過激主義者でもなく、サウジや在独イスラム教徒を相手に過激な投稿を繰り返し、男は多くの名誉棄損の訴訟を抱えていた。つまり、国家に脅威を与える人物とは見なされていなかったために、特別監視対象ではなかった。 それにクリスマスマーケットを襲うのは通常、イスラム聖戦主義者だが、男は反イスラムの無神論者だった。ヨーロッパではイスラム聖戦主義過激派や反ユダヤ主義過激派、極右過激派は当局が各国と連携し監視を続け、情報交換もしており、テロ計画の多くが事前に阻止されている。しかし、犯人はその対象外にいたということだが、政府は強く批判されている。
事件後、反移民のポピュリズム政党、ドイツのための選択肢(AfD)は事件の起きたマグデブルクで、事件を政治的に利用した反移民集会を開く一方、事件を追悼する市民集会も開かれた。 いずれにせよ、移民が招いたテロの悲劇に対して、キリスト教徒は異質の価値観を持ち込む移民の同化政策がうまくいっていないことへの政府への怒りは収まるどころを知らない。 ■ドイツでテロを突き止めにくい理由 フランスであれば、同様なテロが発生すれば、政府の管轄は内務省で、同省傘下の国内治安総局(DGSI)が国家警察特別介入部隊(RAID)などを指揮しているが、連邦制をとっているドイツでは、連邦政府の内務・国土相のナンシー・フェーザー氏の責任論は浮上していない。同氏も男の危険性を把握していなかったことへの謝罪はない。