クリスマス前のテロに政府も当惑、政治も経済もボロボロ…優等生だったドイツに何があったのか
ドイツの凋落は止まらないのかーー。12月20日午後7時頃、ドイツ東部でクリスマスマーケットを訪れた群衆に車が突っ込み、子どもを含む5人が死亡、230人以上が負傷するテロが起きた。クリスマス前の大悲劇にもかかわらず、いまだに事件の全容は解明されていない。 【写真】テロの現場になってしまったクリスマスマーケット この混乱は今のドイツの衰退をそのまま表すものだ。GDP成長率の鈍化に加え、ロシアの天然ガス依存からの脱却や原発ゼロで不安定化したエネルギー供給、自動車産業のEV戦争での劣勢、加速化する少子高齢化、DXの遅れとハイテク人材不足、規制で新規ビジネスが育たない硬直化した環境……さらに、そこに連立政権崩壊が追い打ちをかけている状態にある。
■30年前のフランスの状況にそっくり この現象、30年前にフランスで聞いた現象とそっくりだ。当時、スタートアップ企業がアメリカ経済をけん引し、今ではそのスタートアップ企業だったGAFAMのビッグテックが世界経済を動かしている。 経済停滞が深刻化したフランスで論じられていたのは、ミッテラン左派政権で巨大化した政府による管理社会の硬直化をいかに脱するかだったが、今のドイツでは同様の議論が持ち上がっている。
フランスがその課題を克服したとは言えないまでも、ドイツの衰退に影響を与えていることは間違いない。ドイツの強みは強力な経済基盤、日本同様のものづくり大国としての技術力、優秀な人材と国際的信頼度だが、ショルツ首相の不人気は、これらの課題に対して極めて古い観念を維持していることだ。 その象徴が11月6日にリントナー財務相を解任したことだった。今回の混乱の主因となったのは、連立政権内の対立で来年度予算成立が見通せない状況に陥ったことにある。
そもそも3党連立の一角をなしていたリントナー氏の自由民主党(FDP)は、経済リベラルを推進する党で、ショルツ氏の社民党や環境政党の緑の党のような左派とは異なっていた。 連立政権が発足した後、彼らが実行したのは原発との完全離脱だったが、そのため、原発よりCO2排出の多い石炭発電を残す極めてイデオロギー的決断を実行したが、ウクライナ紛争で左派政権は追い詰められていった。同時にメルケル前政権の置き土産だった大量に受け入れた移民の同化政策で苦戦を強いられた。