3~5年で転職がシリコンバレー流 。1社に留まり続けるリスクを認識せよ
サンリオ米国法人のCOOを経てシリコンバレーでピジョン、LINEヤフー、トランスコスモスなどの社外取締役を務める鳩山玲人さん。多くの成功者の観察を元に「シリコンバレー流の学び方」のエッセンスを紹介する。『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』より一部を抜粋してお届けします。
シリコンバレーでは「転職」と「ラーニング」と「キャリアアップ」がセット
自分の経験からも強く思うのは、日本のビジネスパーソンの学び方とシリコンバレー流の学び方には根本的な違いがあるということです。 日本では「勉強する」「学ぶ」といえば、本を読んだり学校に通ったりする座学のようなイメージが強いように感じますが、シリコンバレーでは「転職」と「ラーニング」と「キャリアアップ」はセットになっているのです。 そもそもシリコンバレーに限らず、アメリカでは長く同じ会社に勤めて役職が上がっていくケースはあまりありません。20代の若手の場合はまた少し事情が異なりますが、通常「階級を上げて仕事をしたい」と思えば、転職するのが一般的です。転職することで、給料も役職も上げていくわけです。 多くの人は3~5年ごとに転職します。30~40年もビジネスパーソンとして働けば、10社ほど経験するのがごく当たり前です。40代でも、5、6社のキャリアを重ねているという人が多いように思います。 この点の日米の違いについては、サンリオ時代から感じていました。 日本では新卒で採用した生(は)え抜きの社員を主力として考えることが多いと思うのですが、当然ながら、新卒の育成には膨大な時間がかかります。生え抜きの社員は自社での経験しかないので、知見も相応のものにとどまりがちです。 一方、米国子会社で「優秀な人を採用したい」と思ったときは、ヘッドハンターや転職斡旋(あつせん)会社に依頼し、ディズニーやワーナー、ユニバーサルなどでキャリアを積んだ人を探してもらうのが自然な流れでした。 そうやって探すと、「ディズニーとワーナーで仕事をしていました」といったキャリアの持ち主がたくさんいるのです。エンターテインメント業界の知見が深く人脈もあるので、そういった人材はサンリオを成長させていくうえで、とても重宝しました。 アメリカではこのような「転職によるキャリア形成」が一般的なのですが、シリコンバレーが面白いのは、それに加えて企業のステージの変化もあることです。 たとえば、ひとくちに「スタートアップ」といっても、創業者と数人の社員でアイデアを構想しているような企業もあれば、アイデア構想を経てプロトタイプ作りやテストに進む段階の企業、顧客にプロトタイプへの評価をもらう段階から製品のリリースへと進みつつある企業、売上を立ててキャッシュフローを安定させていき、IPO(新規公開株)やM&Aも視野に入ってくる企業まで、一般には「シード(seed)」「アーリー(early)」「ミドル(middle)」「レイター(later)」と呼ばれるような、さまざまな成長段階にある企業がひしめいています。 そして、それぞれの成長ステージで必要とされるスキルや能力、専門性などには当然、違いがあります。ですから、たとえばシリコンバレーで働いている人たちの中には、大企業もスタートアップも経験したうえで「レイターのセールスの仕事が一番自分に合っている」という人もいるわけです。 業界・業種と職種の組み合わせだけでなく、企業の成長段階も加味されるわけですから、仕事の選択肢は非常に豊富だといえます。 シリコンバレーの人たちが転職を繰り返す中で自分の興味・関心や得手不得手を知り、知見を重ねていく様子を見ていると「キャリアとはこうやって築いていくものなのか」と痛感させられます。 ちなみに、シリコンバレーでは「失敗も、その人の資産」とみなされます。 当たり前の話ですが、「このステージで、このような失敗をした」という経験は、「同じ失敗をしないようにチェックできる」という意味で資産になるからです。失敗が怖いから転職しないというようなマインドはない、といっていいでしょう。