「ドラフト注目」富士大・麦谷祐介が一度は失った「野球」と「自信」を取り戻して、「夢」を叶える日
野球はもうやめよう
予想できなかった未来を、今度は笑顔で迎える。 高校で野球部をやめた時点で、プロ野球選手になる夢も見えなくなった。それでも手を差し伸べてくれる人がいた。走攻守の三拍子に、プロ向きの負けじ魂。退路を断って吉報を待つ富士大の麦谷祐介外野手の歩みを転入先となった大崎中央高校の平石朋浩監督が振り返る。 【写真】す、すけている…全米も絶賛！大谷翔平の妻・真美子さん「衝撃のドレス姿」 子供のころから、その野球センス、身体能力はずば抜けていた。小学2年生から野球を始め、5年生のときには100mで宮城県代表として全国大会に出場。中学生のときは楽天の下部組織とした設立された「東北楽天リトルシニア」の1期生セレクションで約100人の中から選ばれた20人に名を連ねて、3年生のときには中学硬式野球日本一を決める「ジャイアンツカップ」でもプレーした。高校は甲子園常連の強豪に進学。 しかし、エリート街道を突き進んでいた麦谷に思いもよらぬ“挫折”が待っていた。 「麦谷は元の高校では最初の冬、人間関係に悩んで野球部を退部。その後は学校には普通に通うも、心の部分でショックを受けてしまったところもあって野球はもうやめようと考えていた時期もあったようです。 それでもご両親や楽天リトルシニアの関係者などが支えて、応援してくれたそうで、私のところにも面識がある当時の楽天リトルシニアの監督だった方から連絡があり、麦谷が転校を考えているのだがいい高校はないかと相談されて、1度、うちの高校を見学することになったんです」 2年生になる4月に大崎中央高校に転入してきたときの麦谷は気持ちを整理して、再び野球を必死に頑張るという姿勢でグラウンドに足を踏み入れたという。
失われた自信
「ただ、まずは彼の気持ちの部分をケアしなければいけないと思い、最初のうちは同級生たちと交わる機会を増やすようにしていました。それに本人はいい意味で強がりなので、そういうことは言わないでしょうけど、うちに来たときは正直、自信を失っていた。 上級生、同級生も快く迎え入れてくれてチームに馴染むのには時間はかからなかったけど、秋になって新チームで副キャプテンを任せて、『おまえ、絶対プロに行けるから1つ1つ地道に頑張っていこうな』なんて話をしても『自分はそういう選手じゃないんで』とか『そういうレベルじゃないんで』ということを口癖のように言っていました」 秋は地区大会で優勝して県大会にはシードで臨んだ。初戦となる2回戦は3回までに7対0とリードを奪ったが雨天ノーゲーム。翌日の再試合で0対2と完封負けしてしまう。 「楽天リトルシニアの同級生の中には県内外の強豪校に行って夏の甲子園に出たり、翌春のセンバツへの出場が決まったメンバーも多くいた。口には出さなかったですけど麦谷もそういう結果を思い描いていただろうし、彼らに置いていかれているような感覚、悔しさがあったと思います。 大会の後、寮の部屋で話したときも『悔しいです』と涙を流していた。感受性がとても豊かで、泣くこともよくありましたね」 まだ高校生だから、緩みが出てしまうこともある。平石監督も愛情を持って厳しく接した。
