「愛情が冷めても離婚しない」のは日本人だけ…和田秀樹「食生活、運動不足より深刻な中年の体を蝕むもの」
■「世間の価値観」に振り回されてはいけない 一方、「そのうちなんとかなるだろう」とのんきに気長に構える人は、はっきり言ってあまりできる人のイメージはありません。のんびりゆったりしています。 あなたがどちらのタイプかはわかりませんが、大事なのは、自分のペースを守ることです。スピード感のなさが自分の弱点だと自覚しているのなら、それの克服に努めるのもいいかもしれませんが、世間の価値観に惑わされて、無理にスピード感を出そうとするのはいかがなものでしょうか。 また、もともとスピード感が備わった人でも、「ちょっと疲れたな」とか「イライラが溜まってきたな」と感じるようなら、スピード感にこだわる必要はありません。 世間の価値観からは逃げるに限ります。 とくに最近、「なんだか追い立てられるように暮らしているなあ。以前はもっとゆったり暮らしていたのに……」と感じるようになった人は、もうちょっと気長に生きてみませんか。 ■日本人はもっと「逃げる」を活用したほうがいい 日本人には、夫婦関係や人間関係でも、逃げずにじっと我慢という傾向が見られます。 欧米人は愛情が冷めたら素早く離婚してしまいますが、日本では我慢するのがふつうのことですから、離婚というのは「よほどのこと」として選択肢から外されます。 総務省統計局「世界の統計2018」によると、日本人の離婚率は1000人当たり1.7組で、世界で10番目。トップのロシアの4.7組、2番目に高いアメリカの2.5組を下回っています。 人間関係に悩んでいる人の8割くらいは、その人間関係から逃げられないと考えていますから、職場や学校、友人やママ友まで、多くの人が「我慢」を選択しているのです。 「我慢する」という考え方は、ある意味では日本人の「美徳」と見ることもできますが、ストレス対策という面で考えると、必ずしも最良の選択とはいえません。 日本人が「逃げる」と考えるのは最後に自殺するときだけ……というのでは、最悪の逃げ方しかできないことになります。 これではあまりにも悲しすぎます。もっともっと「逃げること」を活用したいところです。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹