部活動の強制加入、高校野球の強制応援が続く日本の教育現場…岩手県の中学校は、2020年度で6割の学校が「強制加入」
子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か #3
世界的にも異質とされている日本の学校の部活動。もちろん自ら進んで取り組んでいるなら問題はないだろう。だが入りたくないのに入らされているとしたら…? 【写真】猛暑も問題 世界的に見ても異質な日本の部活動 書籍『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』より一部を抜粋・再構成し、日本の部活動の問題を教師と生徒、ふたつの両方の視点から考察する。
部活動の強制加入
ルールで児童生徒の行動をがんじがらめにしているのは、校則だけではない。その一つが、部活動である。2017年度にスポーツ庁が実施した運動部活動等に関する実態調査によると、公立中学校の30.4%、公立高校の15%が部活動は「全員が所属し、活動も原則参加する」、実質的に強制加入の状態となっている。 しかし本来、学習指導要領によれば、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とされており、制度上は「参加は任意」となっている。また2018年3月にスポーツ庁、12月に文化庁がそれぞれ運動部・文化部の「活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、部活動への参加を強制しないよう留意しなければならないことを、本文、Q&Aで明記している。 にもかかわらず、いまだに部活動強制加入が続いている。岩手県内の中学校では、2020年度、任意加入は150校中60校で、6割の学校が「強制加入」となっている。 では政府がガイドラインを作っているにもかかわらず、なぜ部活動の強制加入は続いているのか。その理由としては、大きく7つ挙げられる。教員へのアンケートサイトである「フキダシ」で、部活動の必須加入に関するアンケートも実施したため、その回答結果も参考にしながら、背景を整理していきたい。 (1) 歴史的背景 今では、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とされる部活動だが、20年ほど前まではクラブ活動が全員必修であった。 平成元年(1989年)の学習指導要領改訂までは、特別活動として週1回行う「クラブ活動」が必修で位置付けられており、同年の改訂で、中学・高校ともに、教育課程外活動の部活動をもって代替できることになった(「部活動代替措置」)。結果的に、全員が部活動に参加する流れになっていったが、その後、中学校では平成10年(1998年)、高校では平成11年(1999年)改訂の学習指導要領で必修のクラブ活動は廃止され、部活動は任意参加の、課外活動の一環として行われるようになった。 しかし、これまで全員参加になっていたため、そのまま依然として残っている。また、1980年代頃までは、今より学校が荒れていたため、放課後自由にさせない、部活を通して指導する、という成功体験を、まさに今の校長世代が経験していることも大きい。 さらに、名古屋大学・内田良教授らの調査によると、部活動が教育課程外であると正しく認識できている現役教員は56%程度しかいないという結果になっており、そもそもあくまで「任意参加」のものであると認識されていない。
【関連記事】
- 人口のおよそ14%「境界知能」は知的障害と何が違うのか…複雑な内容の文書を扱う活動などでは強いストレスを感じることも
- 〈「ギフテッド」と呼ばれる人たち〉3歳で機械式時計の仕組みを熟読、小4で英検準1級…IQ154の少年が学校に行けなくなった理由とは
- 30年後、野球部員は1校3.5人に…部活動を維持できないケース多発! それでも改革を拒む教育ムラの人々は「部活は大事な学校教育」と言う
- 下着は白かベージュ…外国出身児童が不登校になるほど強要した「ブラック校則」の実態と教員の言い分「地域からクレームが毎週くる」
- 「私たちはすごく非現実的な、夢の中にいるような時代を生きている」…見なかったW杯、安倍氏の国葬、岸田政権の今後、小室圭さん…芥川賞候補作家・鈴木涼美が噛み砕く2022-2023年の世相