部活動の強制加入、高校野球の強制応援が続く日本の教育現場…岩手県の中学校は、2020年度で6割の学校が「強制加入」
(2) 教育的意義があると思われているから
前述の生徒の「荒れ」への対応策としての側面もあるが、部活動によって規律や自己肯定感を高めるなどの教育的意義が挙げられる。筆者も学生時代はずっと(好きで)サッカー部に所属しており、その意義は否定しない。ただ、部活動を通してしかそういった規律や努力の方法などを学べないかというと、全くそんなことはない。 全然やる気もない部活動を強制的にやらされても、むしろ嫌いになる可能性の方が高いのではないだろうか。また同じ学校内だけの部活だと、非常に狭い、閉じた関係性になるが、学校外のコミュニティに参加することができれば、その分様々な人と知り合うこともでき、種類が限られた部活動よりも、趣味の範囲が広がる可能性も高い。 よく「生徒数の減少で部活動の数を維持できなくなっているから」という声も聞くが、そもそも同じ学校内で様々な部活動をやってきたこと自体、異常だったのではないだろうか。実際、他の国々では部活動はあまりなく、地域コミュニティの一環でクラブが存在する。 生徒の部活動強制加入や、教師の全員顧問就任、無報酬によるタダ働き、そうした「犠牲」の上に成り立っていただけである。 そして子どもの減少や、教員の多忙化によってこれまで以上に無理が生じており、見直すべき時期に差し掛かってきている。 「部活動をやっていないことで、関わる先生が減るため、色々な見方からの指導ができなくなる。地域によっては、部活動をやって子どもを疲れさせてから帰らせたり、休日も学校に行く必要を作り出すことによって、地域の治安を維持していたりすることもあるから。また、受験時に部活動で頑張ったことを聞かれたり、資格や成績によっては推薦の条件にあてはまることがあるから」(学校現場の声を見える化するWEBアンケートサイト「フキダシ」) 「部活動は教育課程外の活動なので、それを必須にして生徒の意思を無視した状態で行うのはおかしいと思います。放課後の時間は個人のものであり、自由選択で自分らしく生きられる時間として位置づけてあげたいです。 また生徒を必須加入させることは、教師も必須担当(指導)せねばならぬ状況につながります。勤務時間内ももちろんですが、勤務終了後や土日のボランティア参加等、こちらも本人の意思に反して半強制的に行われます。必須加入かそうでないかに関わらず、この法外な働き方は大きな問題をはらんでいます。 世界各国を見渡しても、かなり異質な教育活動。同質性を押し付け、それぞれが個性豊かに生きることへの不安を植え付けます。多様な生き方を尊重する意味でも、部活動は自由選択であるべきだと思います」(同アンケート結果)
【関連記事】
- 人口のおよそ14%「境界知能」は知的障害と何が違うのか…複雑な内容の文書を扱う活動などでは強いストレスを感じることも
- 〈「ギフテッド」と呼ばれる人たち〉3歳で機械式時計の仕組みを熟読、小4で英検準1級…IQ154の少年が学校に行けなくなった理由とは
- 30年後、野球部員は1校3.5人に…部活動を維持できないケース多発! それでも改革を拒む教育ムラの人々は「部活は大事な学校教育」と言う
- 下着は白かベージュ…外国出身児童が不登校になるほど強要した「ブラック校則」の実態と教員の言い分「地域からクレームが毎週くる」
- 「私たちはすごく非現実的な、夢の中にいるような時代を生きている」…見なかったW杯、安倍氏の国葬、岸田政権の今後、小室圭さん…芥川賞候補作家・鈴木涼美が噛み砕く2022-2023年の世相