愛犬10年物語(4)「男1匹犬2匹」犬を伴侶にして生きる
「ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダール」との出会い
ずいぶん寂しいことだと思う人もいるかもしれない。でも、藤岡さんは人と関係を築くことを拒否しているわけではない。実際に今の職場での人間関係は良好だし、犬を通じた友人知人が全国に大勢いる。以前苦しんだ対人恐怖症も、あえて人と関わる仕事に転職するなどして自ら積極的に治した。「自分の性格はすごく面倒くさいと思います。さみしがりやの1人好き。誰かと遊んでいたいし、彼女も欲しいと思ったりもするんですが、1人でいる時間の方がもっと好き。それなら、好きな時に好きな場所へ、車中泊の旅などにもいつでも付き合ってくれる犬の方がいいな、と思うんですよね」
東京・文京区で生まれ育った藤岡さんは、子供の頃から犬が大好きだった。母の実家にはサモエド(シベリア原産の真っ白な大型犬)がいて、そのお腹で寝ている幼い頃の写真が残っている。シェルティ(シェットランド・シープドッグ)の繁殖をしている親戚もいて、大学の獣医学部に進んだ頃には実家でも飼い始めた。大学ではバイオ系の研究をし、自動車整備会社などを経て、現在は研究所の技術員としてアルツハイマー病の治療薬の開発に携わっている。1頭目のグローネンダール『神威(かむい)』(オス・13歳)を迎えたのは、今の職場に移る少し前のことだ。
「もともと実家で飼っていたシェルティやゴールデン・レトリーバーなどの長毛の大型犬を飼いたかったのですが、ある日、犬種図鑑をめくっているとグローネンダールに目が止まりました。真っ黒でオオカミみたいな立ち耳の犬もかっこいいな、と。大学卒業後、しばらく自動車整備会社に勤めていたのですが、その頃にドッグショーの会場で初めて間近にこの犬種を実際に見て惚れ込みました」 そのグローネンダールは、僕もよく知っている聴導犬として活躍していた『サミー』だった。藤岡さんが、ユーザーの「ゆんみ」の名で講演活動などもする女性を通じて出身犬舎に問い合わせると、ちょうど子犬が生まれるとのこと。さっそく見学に行き、神威という伴侶を得ることになった。