愛犬10年物語(4)「男1匹犬2匹」犬を伴侶にして生きる
13歳の愛犬、持病との共存と揺れる親心
神威たちとは、時には兄弟犬やグローネンダール仲間と連れ立って山歩きやスノートレッキング、川遊び、キャンプなども楽しむが、神威には7歳の頃から頚椎ヘルニアの持病があり、昨年11月には老齢性突発性前庭疾患という病気を発症した。だから、あまり無理はさせられない。自宅でも風蓮と激しくじゃれ合うのを避けるために、2頭の居場所を仕切っている。頚椎ヘルニアは、簡単に言えば首のヘルニアで、神威の場合は症状が悪い時には首を曲げると強い痛みが走る。前庭疾患は、耳の奥の「前庭」という平衡感覚を司る所に障害が起き、立ち上がれなくなったり平衡感覚がなくなる病気。いずれも老齢ということもあり、全身麻酔を伴う手術で完治を目指すのは難しい。今は、継続的なステロイド投与などの治療が一段落し、無理をさせないように気をつけながらも、普通に散歩や外出ができる状態まで回復した。 「今まではちょっとキャンと声を上げても慌てなかったけれど、やはり今は神威の一挙手一投足が気になって過保護になってしまいます。もちろん、なんとか完治させてあげたいと思いますが、知識としてはもう完全に元には戻らないことは分かっています。たとえ痛くても、思い切り散歩やディスクをさせてあげてコロッと逝ってしまった方がいいのかな、という親心もあります。そういうもやもやした気持ちを抱える日々です」 神威は先日13歳の誕生日を迎えたばかり。大型犬の寿命の目安が10~14歳だということを踏まえれば、どんな状況であれ、飼い主にはさまざまな“親心”が去来する。人一倍犬に尽くし、尽くされる藤岡さんが、神威を失ったらどうなるか、本人も自ら語るように心配ではある。犬との別れは、その純粋さゆえに、ある意味では肉親や親しい人との別れ以上に心に穴を空ける。しかし、神威の病気が発覚するずっと前から、藤岡さんは神威と風蓮に対し、文字通り全力を尽くして悔いが残らないように接している。だから、心配無用。今はとにかく、毎日をこれまで通りの「犬バカ」として過ごしてほしいと思う。